個性派レフティ支えて15年 マスターズ2勝の“黒子役”がシェフラーとタッグ
やっと、と言ってもいいでしょう。スコッティ・シェフラーが「WM フェニックスオープン」でツアー初優勝を飾りました。
ジョーダン・スピースの後輩に当たる名門テキサス大出身で、身長190㎝の大型プレーヤー。高校で「全米ジュニア」制覇、大学で「全米オープン」ローアマと“王道”を歩み、プロ転向後もすさまじいスピードで出世街道をひた走ってきました。
下部コーンフェリーツアー最優秀選手として昇格を果たした2019-20年シーズン。コリン・モリカワが初出場初優勝を遂げた「全米プロ」でダスティン・ジョンソンと最終日最終組を回ったのがシェフラーでした。6試合でトップ5入りするなど、ポイントランキング5位に食い込んで新人王を受賞。
昨季も「WGCデルテクノロジーズ マッチプレー」で2位となり、18位だった「マスターズ」を除くメジャー3大会でいずれもトップ10入りする抜群の安定感。レギュラーツアー未勝利ながら世界ランキング15位で今大会を迎えていたことも、実力の一端を示しています。
今季ドライビングディスタンス26位(309.4yd)と飛距離があり、パットのスコア貢献度も28位とバランスの取れた選手です。20年「ザ・ノーザントラスト」2日目にツアー11人目(12回目)の50台となる「59」をマークするなど爆発力も十分。
4日間の「ストロークゲインド・パッティング」がフィールド2位(+6.494)とグリーン上が冴えわたっていた今大会。3日目に“裏街道”10番スタートから「62」と猛チャージをかけ、最後は直近の年間王者パトリック・カントレーをプレーオフで撃破。まさに殻を破る1勝となりそうな予感がしますね。
まだ25歳とは思えない貫録を漂わせるシェフラー。この試合をテレビで見ていて「おや?」と思った方は、かなりのPGAツアー通です。
バッグを担ぐテッド・スコットさんは昨年までバッバ・ワトソンのキャディを15年も務めたベテラン。オーガスタでの2勝を含め、ツアー12勝をアシストしてきたスコットさんは昨年9月末にワトソンとのコンビを解消することになり、新シーズンに入った11月「ザ・RSMクラシック」から新たな相棒のサポートに回ってきました。
僕がロープ内で接していた限りでは気遣いができて優しい一面もあったワトソンですが、喜怒哀楽が激しく繊細な性格の持ち主です。特に神経をとがらせる試合中はキャディとのやり取りが感情的になることもあり、一筋縄ではいかなかったと思います。優勝争いの最終盤でショットを池に入れて敗れた13年「トラベラーズ選手権」では、そんな一部始終がテレビカメラの前で繰り広げられたこともありました。
一時期ツイッターで「#PrayForTedScott(テッド・スコットのために祈ろう)」というハッシュタグが話題になったことも。これに対して「彼(ワトソン)のイメージを傷つけている」と怒りをあらわにしたのが、ほかならぬスコットさん。本当に献身的にボスを支えていたのです。
ジョークが好きで人当たりも良く、大の親日家。仲の良い日本人キャディも多かったと記憶しています。かくいう僕も食事に連れて行ってもらったり、ビリヤードを教えてもらったり、大変お世話になりました。
ツアー屈指の大観衆を集める「WM フェニックスオープン」は3回目の出場だったシェフラーにとって、当地でワトソンのキャディとして2度の2位に入っているスコットさんの後押しは心強かったはず。新進気鋭のホープと経験豊富な黒子役。メジャーをはじめ大舞台でも要チェックの名コンビになるかもしれません。(解説・進藤大典)