2021年 ザ・ノーザントラスト

【進藤キャディ解説】1975日ぶり2勝目のディナーは寿司 トニー・フィナウは日本食が大好物

2021/08/25 08:15
コーチのボイド・サマーヘイズ氏と抱擁。トニー・フィナウの2勝目をみんなが待っていた

6月に仕事の関係で米国を訪れたとき、トニー・フィナウと2度ほど夕食のテーブルを囲む機会がありました。頼んだメニューといえば、焼きそば、ラーメン、うどん、焼きおにぎり(炭水化物ばっかりですね、笑)、揚げ出し豆腐×3皿…とにかく日本食が大好きなんです。身長193㎝の長身選手で、学生時代にプレーしていたバスケットボールでも大学からスカウトされたほどのアスリート。食べる量もすさまじくて驚きました。

そのフィナウが「ザ・ノーザントラスト」で優勝しました。ツアーデビュー翌年の2016年「プエルトリコオープン」で初優勝してから実に1975日。長い長い2勝目までの道のりでした。ちなみに祝勝ディナーは「寿司だね。大好物で、いつも食べているんだ」。やっぱり日本食だったそうです。

今シーズンのドライビングディスタンス305.4ydはツアー32位とやや控えめ?な数字となっていますが、もともと振ろうと思えばどこまでも飛ばせるんじゃないかという底知れない大型プレーヤー。

今大会は得意のショットがキレキレでした。ドライビングディスタンス(313.4yd)5位、フェアウェイキープ率78.57%(44/56)6位、パーオン率80.56%(58/72)2位と抜群の安定感。“マンデーバックナイン”はハーフ「30」と圧巻のプレーでリードしていた世界ランキング1位のジョン・ラーム(スペイン)を捉えました。

プレーオフでキャメロン・スミス(右)を破った

プレーオフの相手はキャメロン・スミス(オーストラリア)。3日目にコースレコード「60」をたたき出したスミスも、先に打ったフィナウのショットをひと目見て調子の良さとあふれる自信を感じ取ったように映りました。

毎週のように試合でいろいろな選手のプレーを見ていると、自信を持って振ってきている選手というのはすぐにわかるものです。特にプレーオフはマッチプレーと似ているところがあり、相手のプレー次第で余裕が生まれることもあれば、プレッシャーがかかることも。その点で打順も勝負を分けるポイントになりがちです。特に今回の18番のようにティショットが難しいホールでのプレーオフは、先に打つ選手の方が心理的に優位に立てることが多いのです。

スミスのミスショットを引き起こした要因のひとつにフィナウの完璧な一打があったことは間違いないでしょう。

「全米オープン」のころから握りを戻したというパッティングも冴えていました。今年に入ってクロスハンドで打っていた時期もありましたが、6月くらいには従来の形に。同じタイミングでパター自体も替え、この4日間でスコア貢献度を示す「ストロークゲインド・パッティング」も「+3.987」。シーズントータルでは99位の部門でフィールド16位に入りました。

小さなガッツポーズまで長い道のりがあった

初タイトルから2勝目をつかむまで、142試合で8回の2位を含めてトップ10に入ること39回。昨年2月「フェニックスオープン」ではウェブ・シンプソンに、今年2月「ジェネシス招待」でもマックス・ホマにプレーオフで敗れ、相次ぐ惜敗がフィーチャーされることも多くなっていました。

「負けるのはつらい。世界中の人が見ている前で負けるのは本当につらいんだ。でも、みんなが『次はいつ勝てるか?』と言ってくれるから、僕はもっとハングリーになれる。一番は自分を信じ続けること。次の勝利まで、5年も待つ必要がないことを願っているよ」

人一倍“産みの苦しみ”を味わってたどり着いた2勝目。佳境を迎えるフェデックスカップポイントレースで1位に浮上した31歳は、この優勝を機に手が付けられないほどの選手になる可能性も十分に秘めています。(解説・進藤大典)

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