2021年 セントリートーナメントofチャンピオンズ

忘れられない7年前の衝撃 イングリッシュ復活に誇らしさ

2021/01/12 12:05
長身から繰り出すハリス・イングリッシュのしなやかなスイング(Cliff Hawkins/Getty Images)

みなさま、あけましておめでとうございます。2019年から始まったこの「PGAツアー・ヤーデージブック読解」のコーナーですが、新たな一年を迎えるにあたってリニューアルすることになりました。優勝者をはじめ注目選手のプレーをデータから紐解いたり、その横顔を紹介しながら試合を振り返ります。折を見て、昨年までのような注目ホールの事前解説もできたらと思っています。2021年もよろしくお願いいたします!

2014年「ウェイストマネジメント フェニックスオープン」最終日に松山英樹と同組でプレーしたハリス・イングリッシュ

例年優勝者だけが出られるマウイ、そして翌週にフルフィールドのホノルルと連戦を組むのも、PGAツアートップ選手ならではの新年の幕開けでしょう。コロナ禍であっても、選手の体に染みついたカレンダー通りに試合が開催されるのは、本当にありがたいことです。

プレーオフを制したハリス・イングリッシュ。2013年以来の優勝と言われても、信じられない自分がいます。はっきり覚えているのは、松山英樹選手のキャディとしてPGAツアーにフル参戦して間もなかった2014年の「ウェイストマネジメント フェニックスオープン」。3日目を終えて2人が首位と3打差の3位で並び、最終日を同組でプレーしました。

190㎝を超える長身。フィジカルを生かして150ydをPWで打てるだけでなく、柔軟性があり、しなやかなスイングから繰り出す高くて強いビッグボールに衝撃を受けました。「こんな怪物がゴロゴロいるのか…」。ツアーの層の厚さを見せつけられた瞬間でした。

2019年11月の「マヤコバゴルフクラシック」では2位から最終日を出て5位に (Gregory Shamus/Getty Images)

しかし、成績が低迷していた近年はショットの安定感を欠き、2018―19年シーズンのフェアウェイキープ率61.57%はツアー111位、パーオン率66.85%は91位。ショットの貢献度を示す「ストロークゲインド・ティtoグリーン」も147位に落ち込み、ポイントランク149位とフル出場の資格を手放してしまいました。

ウィークポイントを物語っていた3部門ですが、昨季はそれぞれ111位→77位、91位→9位、147位→18位と劇的に改善。不調時に出会ったジャスティン・パーソンズさんというコーチの存在が大きかったと聞きます。米下部ツアーでアマチュア優勝も果たしたジョージア大時代のプレーを徹底して見返すなど、本来の持ち味を生かす取り組みについて「迷子になっていた自分を連れ戻してくれた」と感謝を口にしています。

数字は正直です。昨シーズン新型コロナウイルスに感染した時期もあった中、予選落ちはわずか2試合。自身2度目のプレーオフシリーズ最終戦進出も達成しました。昨年9月に始まった新シーズンから絶好調。「全米オープン」最終日スタートホールで左に曲げたティショットが無観客開催の影響もあって紛失球となる不運もありながら、4位に食い込みました。

プレーオフを見守ったヘレン夫人に祝福されるハリス・イングリッシュ(Cliff Hawkins/Getty Images)

この試合前までシーズン出場6試合で「全米」を含め4度のトップ10入りを重ね、昨年12月のツアー外ダブルストーナメント「QBEシュートアウト」でマット・クーチャーと組んで優勝もした自信。それを裏付けるショット力の向上。何より、激しい浮き沈みを経験したプロキャリアで培われた忍耐力。

すべてがかみ合ったからこそ、首位タイで迎えた最終日に前を回るホアキン・ニーマンが怒涛のバーディラッシュを見せても動じることなく、プレーオフに持ち込んで勝ちきることができたのです。

まだまだ先の長いシーズンとはいえ、ポイントレースでダスティン・ジョンソンに次ぐ2位。7年前、間近でプレーを見て感じたインパクト通りのポジションに収まる名前を見て、勝手に誇らしさを感じています。(解説・進藤大典)

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