2022年 セガサミーカップ

目標は「毎日うまくなる」岩田寛の流儀

2022/08/23 18:11
ウイニングパットを決めた瞬間。シャイな人柄がにじみ出る

先週は国内外で同学年の活躍がまぶしい一週間となりました。PGAツアーのプレーオフシリーズ第2戦「BMW選手権」でアダム・スコット(オーストラリア)が5位に入り、大会前の時点で45位だったフェデックスカップポイントランクを29位に上げて3年ぶりに最終戦「ツアー選手権」のエリートフィールドへ滑り込みました。

そして、国内ツアー「長嶋茂雄招待セガサミーカップ」では岩田寛選手が7年ぶりの大会2勝目。僕と岩田選手、さらには宮里優作選手と佐藤賢和キャディは東北福祉大ゴルフ部の同期に当たります。昨季6年ぶりの優勝を飾ったときにも本コーナーで特別編としてコラムをお届けしましたが、今回も黙っているわけにはいきませんよね(笑)

フェアウェイバンカーからもベタピン!

今年に入ってからの岩田選手は悔しい思いの連続だったと聞きます。大会連覇を狙った「中日クラウンズ」は最終日に単独首位から出るも3位。2週後の「ダイヤモンドカップ」は初日首位からの2位フィニッシュでした。2015-16年シーズンから参戦したPGAツアーでは高い壁に跳ね返されましたが、リベンジの思いは胸の中に宿ったまま。セントアンドリュースでの「全英オープン」再挑戦がかなわず、「全米オープン」の日本予選会でもプレーオフ惜敗となった無念の思いを1、2カ月ほど引きずってしまったそうです。

完璧主義者ゆえ小さなミスを許せず、そのイライラが積み重なってティショットから崩れていくのが岩田選手の悪いパターン。しかし、後続とわずか1打差でスタートした最終日は終始冷静でした。13番のロングホールでボギーを打っても、「まだ1打勝っている」と気持ちを切り替えることができたのは大きなポイントだったと思います。最終18番(パー5)も第1打を同組の2人より飛ばし、ライバルのセカンドを見てからレイアップするか2オンを狙うか決めるという円熟のマネジメントが光りました。

飛ばし屋の大槻智春にも負けなかった

今月「日本プロ」の練習日に会場で取材する機会がありました。弾道測定器のデータを見せてもらってビックリ。キャリー320ydの数字に目を疑いました。米国へ行く前が一番飛んでいて、ここ2、3年で徐々に戻ってきたとも話し、もう一度驚かされました。さらに長年苦しんできたアイアンショットが絶好調。今季、パー3ホールの累計スコアはツアー1位の16アンダー。2位の稲森佑貴選手が9アンダーですから、突出しています。

目標は「毎日うまくなる」。そのためによく動き、よく学び、よく遊び、よく食べ、よく休むがモットーなのだとか。定評のあるアプローチやパッティングといったショートゲームも、豊富な練習量によって培われたものです。大学時代も夜までだろうが黙々とやり続けるタイプで、息抜きで遊びに行ったときも練習をサボったりすることだけはありませんでした。以前、ホームコースのパッティンググリーンで練習する岩田選手を見た知人がラウンドを終えて戻ってくると、まだ同じ場所で練習を続けていたというエピソードが語り草になっているのです。

珍しくVサインをして喜ぶ姿もあった

口下手でシャイな41歳ですが、近しい人に対しては少し言いづらいことも相手のためを思って助言を厭わない誠実な人柄です。つい先日仙台で会ったときにも、僕を含めた周囲のことを本当によく見ているなと感心させられたばかり。東日本大震災ではすぐに故郷のために寄付を始め、夏の甲子園で奮闘していた母校・仙台育英高へ自らの記事を通して応援メッセージを送ったり。裏表がなく正直だから、キャディやトレーナーといったサポートスタッフもずっと変わらず結束力があり、優勝の瞬間もたくさんの仲間がお祝いに駆けつけてくれるのでしょう。

改めて優勝おめでとう!これからも大好きなゴルフで、ヒロシらしく周りを幸せにしてほしいです。(解説・進藤大典)

2022年 セガサミーカップ