ユニクロと共鳴するアダム・スコットのゴルフウエア哲学
マスターズ王者のゴルフウエアへの思いとは
オージーの長年の夢であったグリーンジャケットに袖を通し、最高の名誉も勝ちえたスコット。もちろんそれ以前から、実績と期待を重ね、莫大な額の賞金や契約金も手にしてきた。
だが彼はかねてから、市場で高騰を続けてきたゴルフウエアに対して、疑問を持っていたという。
「ゴルフはただでさえお金のかかるスポーツだ。『ゴルフ用だから高い買い物をする』ということよりも『リーズナブルな価格で、良いものを、きれいに着こなす』ということが、新しいゴルフなんだと僕は信じている」。値の張るウエアに心を奪われる多くのゴルファーの姿勢には、首をかしげる部分があった。
母国のオーストラリアではこの4月にメルボルンにユニクロ1号店が開店した。しかし最近までは、UNIQLOをUniversity of Queenslandと誤解する人もいて、ジョークにもされていたとか。だから、馴染みのないそのウエアについて「そのポロシャツはいくら?」と質問されることも多いスコット。
そんな時、彼は「20ドルくらいのポロシャツに、ロゴを付けているんだ」と言い、ニヤリとする。みんなが決まって驚く顔を見るのが、なにせ快感で仕方がない。
ドライストレッチパンツもエアリズムも、スコットの心を掴んで離さない理由の一つが、コースの外でも、着こなせること。ゴルフ場からそのままカフェへ。着用する時間や場所を問わない特性も、魅力のひとつ。
契約から1年が経過し、ユニクロのスタッフは「今までのスポーツウエアとは逆の流れになっているかもしれません。トップアスリートが着用する高機能ウエアを開発して、それを一般用に落とし込むというのが他のスポーツブランドの常套手段でした。ユニクロはライフウエアとして、一般の人が普段着で着用しているものと同じものを、トップアスリートが着用している。そこが強みかとは思います」と、自信を深めて言う。
高品質、機能性、多様性…。ユニクロとスコットの幸福な関係を築くリーズナブルの意味は、「低価格」という無味乾燥なフレーズに留まらないのである。