「いま僕はココにいます」Vol.145 スコットランド編
人は彼のことを“旅人ゴルファー”と呼ぶ。川村昌弘・29歳。2012年のプロデビューから活躍の場は日本だけでなく、ユーラシア大陸全土、そのまた海の向こうにも及ぶ。幼い頃から海外を旅することこそが夢で、キャリアで巡った国と地域の数は実に70に到達。キャディバッグとバックパックで世界を飛び回る渡り鳥の経路を追っていこう。
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プロゴルファーの川村昌弘です。
いま僕は、エジンバラにいます。
今週の欧州ツアー(DPワールドツアー)は「ジェネシス・スコットランドオープン」です。PGAツアーとの提携が強くなった今シーズン、いよいよ欧米共催の試合になりました。次週の「全英オープン」(スコットランド・セントアンドリュース)も見据えて、米国から松山英樹選手を含めたトップ選手がこちらにやってきました。
前週の「アイルランドオープン」を終えて、直行便でスコットランド・エジンバラに戻りましたが、前回お話しした通り、最近はあらゆる空港が大混雑。航空会社からは今回、出発地のダブリン空港に「手荷物を預ける場合は、出発時刻の3時間半前には来てください。チェックインはあらかじめオンラインで」という事前のお知らせメールが来たほど。
この手順に沿えば、実際には到着から10分未満でカウンターでの手続きは完了しました。欧州圏での移動の際は、まだしばらく時間的な余裕を持った行動が必要のようです。
会場のルネサンスクラブでプレーするのは4回目。レイアウトは頭に入っていますが、毎年のようにティイングエリアは後方に下がり、今年もマイナーチェンジがありました。パー5だった7番がパー4になり、チャンスホールが1つ減ってしまって…。しかも300yd地点にポットバンカーまでできてしまった。飛ばし屋の選手は越えていきますが、「僕はちょうど入ってしまうやん。“自分のところ”には作らないでくれ」というのが愚痴です(笑)
コース近くのホテルで過ごしていたら、PGAツアーで活躍する韓国のイム・ソンジェ選手とばったり。「元気?」と話していると、偶然そこにイ・キョンフン選手も登場。数年前まで一緒に日本ツアーでプレーしていた仲間と顔を合わせ、「(日本にいたのは)ロング、ロング、アゴー」と再会を喜びました。これも欧米ツアーの共催試合ならではの光景です。
海外ツアーでは最近、サウジアラビアの資金を背景にした新シリーズ「LIVゴルフ」が話題で、トッププレーヤーの“引き抜き”が積極的に行われています。確かに職業がプロゴルファーであるからには、数億円の優勝賞金や、下位でも1000万円以上の賞金は大いに魅力的です。しかも3日間大会ですから効率もいい。
ただ僕は今のところ、新リーグは距離を置いて眺めている感じでしょうか。小さい頃から、どんな場面の夢を描くのもやはりメジャーやPGAツアーの大会ばかりで、いま戦っている欧州ツアーでの出場資格も失う可能性があるのだとしたら、あちらに顔を向ける気持ちは湧いてきません。
3日間、予選カットなし、ショットガンスタートでの高額賞金大会はどこかまだ現実味のない、“これまでとは違うゴルフ”に思えて仕方ない。欧州や米国のツアーが長い時間をかけて築いてきた伝統や歴史に触れてプレーしたい気持ちが、僕の中ではまだ強いのです。