「いま僕はココにいます」Vol.156 オーストラリア編
人は彼のことを“旅人ゴルファー”と呼ぶ。川村昌弘・29歳。2012年のプロデビューから活躍の場は日本だけでなく、ユーラシア大陸全土、そのまた海の向こうにも及ぶ。幼い頃から海外を旅することこそが夢で、キャリアで巡った国と地域の数は実に70に到達。キャディバッグとバックパックで世界を飛び回る渡り鳥の経路を追っていこう。
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プロゴルファーの川村昌弘です。
いま僕はメルボルンにいます。
欧州ツアー(DPワールドツアー)は2023年シーズンの第2週を迎えました。今週は再びオーストラリアでの試合。「ISPS HANDAオーストラリアオープン」に出場します。ブリスベンから直行便でメルボルンに来ました。
今季の初戦となった「フォーティネット オーストラリアPGA選手権」は7位でした。直前までタイで出るか出ないかを悩んでいたことを考えれば、“うれしいサプライズ”と言えます。「せっかく来たし、良いコースだから楽しもう。一日でも良いゴルフができれば来年に繋がるはず」という穏やかなテンションにして、3日目、最終日をいずれも最終組でプレーすることができました。
週末にラウンドをともにし、優勝したのは世界ランキング3位のキャメロン・スミス選手(オーストラリア)。なにせ、ギャラリーの数がすごかった。「全英オープン」を制した母国の目玉選手の凱旋試合でもありましたから、ロープサイドにはファンが二重、三重…。ゴルフ場に来た人、全員が見に来ているような感覚でした。
世界のトップランカーとの優勝争いはもちろん刺激的。貫録を見せつけられましたが、「めちゃくちゃスゴイ。かなわない」と絶望的な思いをしたかと言えばそうではありません。スミス選手はソツなくすべてがうまい。ただ、ティショットを350yd飛ばすわけでもなく、曲がるときもある。アプローチひとつ取っても確かに正確ですが、ものすごいスピンをかけたり、特別テクニカルなことをしたりするわけではありませんでした。
プレーが本当に終始シンプル。パットが決まらなくても、フラストレーションを溜めている様子は本当に横にいないと分からないくらい冷静でした。ああいう選手のスコアメークを見ると、自分にも希望が湧いてきます。そう感じられたことも、リスタートの機会としては素晴らしいものになりました。
出場した日本人選手は3人ともトップ10入り。中でも予選会を上位で突破してきた久常涼選手は最終日に「65」をマークして2位でフィニッシュしました。彼が高校卒業前に日本ツアーの予選会に失敗した数年前、実は共通の知人を通じて、僕の地元・三重でプライベートゴルフをともにしたことがありました。
若いのにボールは飛ぶし、曲がらない。きっとすぐに活躍すると確信できるような選手だったのを今も覚えています。岡山出身で、お土産に持ってきてくれたのは名物のきびだんご…。「きょうはありがとうございました」と実直だったのも忘れられません。
金谷拓実選手も初日を92位と出遅れながら、“がまん比べ”のコースではやはり彼の持ち味が生きます。最終的には僕と同じ7位。じわじわ上がってくる強さは健在です。日本人が3人出て、3人とも良いプレーができるのは珍しいこと。久々にツアーに増えた仲間は、いつのまにか年下になってしまいました。来年は僕も30歳。若い選手と頑張っていきたいと思います。