<佐渡充高の選手名鑑 86>スコット・ラングレー
■ 注目のレフティ スコット・ラングレー
サンダーソンファームズ選手権は、全英オープンと同週開催で世界ランク上位50人の選手が不在となるため、初優勝を狙う選手、フェデックスカップポイントランク125位以内にランクインし来季のシード権獲得を目指す選手にとっては、今大会は絶好のチャンスである。
今週注目したいのはルーキーのスコット・ラングレー(24)だ。初戦のソニーオープンでいきなり優勝争いを繰り広げる大健闘を見せた。最終日は、同年齢で同じくルーキーのラッセル・ヘンリーと首位で迎えたものの、スコアを伸ばせず優勝をヘンリーに譲った。しかし初戦を3位でフィニッシュするなど、その存在感を大いに示した。持ち味は鋭い弾道のアイアンショット。強風の中でも的を射ぬくような低めのドロー弾道は、ピンに食い込むように絡んでいく。40代ではフィル・ミケルソン、30代ではバッバ・ワトソン、そして20代ではラングレーと、今やツアー人気のレフティのひとりでもある。
ラングレーは1989年4月28日、ミズーリ州マンチェスターで生まれた。イリノイ大学ではビジネスを専攻し、成績は最優秀。ゴルフでは、2010年の全米オープンで16位でフィニッシュし、ジョージア大学のラッセル・ヘンリーと共にローアマチュアに輝いた。同年にはNCAA(全米学生選手権)でも優勝を飾り、ゴルフにも勉学にも優れ、同大学の最優秀学生賞も受賞した。
■ ファースト・ティ・プログラム出身初のPGAツアーメンバー
1997年にPGAツアー、LPGA、PGAオブアメリカ、USGA(米国ゴルフ協会)、マスターズ委員会などが協力し「ファースト・ティ・プログラム」という非営利団体が誕生した。名誉会長は2010年まで、ジョージ・ブッシュ元大統領が努め、2011年から息子のブッシュ元大統領が就任している。本拠地はフロリダ州セント・オーガスティン世界殿堂のあるワールドゴルフビレッジだ。目標はジュニアゴルファー育成というよりゴルフを経験する機会をより多くの子供たちに提供し、その経験から「ライフ・スキル」を身につけてもらおうというものだ。スポーツマンシップ、尊敬、信頼、責任、忍耐、礼儀、判断力、正直、責任の9つの価値観を、独自の教育プログラムで学ぶ、大規模なゴルフ寺子屋のような団体である。そこには70万人以上の子供たちが参加しており、米国内に200以上の支部を持つ。活動の場は世界に広がり、近年には国外にも6支部が開設された。そして創設から15年、遂に同プログラムから初のPGAツアーの選手が出現するに至ったのだが、それがラングレーだった。デビュー戦での素晴らしいプレーのみならず、爽やかな振る舞いで多くのゴルフファンを魅了し、同プログラムへの評価、関心をもさらに高めたのだった。
■ 悔しい思いを新人トリオに刺激され・・・
大学時代からのライバルたちも、ラングレーと同じく、今季からルーキーとしPGAツアーに参加している。その一人であるヘンリーは、ソニーオープンで初優勝を挙げ、マスターズ出場の夢も叶えた。もう一人は、大学時代のチームメイトだったルーク・ガスリーだ。彼もザ・ホンダクラシックで3位、チューリッヒクラシックでは8位と、2度のトップ10フィニッシュを果たしている。今週、ライバル2人は全英オープン出場を果たしたが、ラングレーは叶わず・・・。しかし、今大会の活躍次第では、今後の形勢を一気に逆転させることも可能なのだ。今大会で優勝すればマスターズの出場権は無理としても、2年間のシード権を獲得できる。ポイントランクでもトップ30しか出場できない最終戦ザ・ツアー選手権への道も見えてくる。