2014年 フライズドットコムオープン

PGAツアーのルールオフィシャルが語る スロープレーの撲滅方法は

2014/10/08 14:37

ルールオフィシャルの仕事とは

(Chris Condon/PGA TOUR)

PGATOUR.comでは、PGAツアールールオフィシャルチーフを務めるスラッガー・ホワイトとマーク・ラッセルに、オフィシャルスタッフ達が毎週感じているプレッシャーと責任について話を聞いたインタビューを2回に分けて掲載する。第1回目はプレーのペース、そしてゴルフ史上に残るルール判定について――

それはまぶしい太陽が照りつく、ある夏の日の朝だった。オハイオ州コロンブスにあるミュアフィールドGCで開催された「ザ・メモリアルトーナメント」初日。14番ホールのフェアウェイ近くで、スラッガー・ホワイトはゴルフカートに腰掛けていた。彼を見つけるのは容易い。20は所有しているというパナマ帽を被り、シャツにネクタイ姿、そして手には無線機とクリップボードを持っている。

無線でコンスタントにやり取りをしていると、既に3度オフィシャルの出番があったらしく、第2組のボー・バン・ペルトロベルト・カストロ、そしてパット・ペレスは予定していたプレー時間を超過していることが判明した。

「われわれは全グループをコンスタントにモニターしている」と話したPGAツアールール部門副代表のホワイトは、フルタイムのオフィシャルとして働く15人のうちの1人であり、毎週ツアー現場にいる8人のうちの1人でもある。オフィシャルは大会が開催される週のはじめにはコースに到着し、競技がある日は第1組目のティタイムより1時間以上前に到着し、最終組全員が終了するまで待機している。

「いつも仲間内で話していることと言えば、選手達が時間通りにプレーしているかどうかということ。常識で判断する場合もあれば、大半は誰がペースを乱しているか明白なことが多い」と言うホワイトは、バン・ペルトとカストロがペース逸脱の原因と判断し、ペレスについては「彼のプレーペースをこちらから定める必要はない」と語った。

カールトン・パーマー・ホワイトIIとして誕生したホワイトは、父親の友人で、軍隊でプロボクサーとして活動した人物から“スラッガー”という名前を与えられた。彼はPGAツアーオフィシャルとして30年以上の経験を誇る。30年もの間、プレーのペースが最重要の議題のぼることなどなかった。そして、当時と現在とを比べても、大した違いは無いという。

今年65歳となり、フロリダのオーモントビーチに住むホワイトは、「1976年と比べても、今のペースは速くも遅くもない。問題は出場選手が156名もいることで、26グループが全18ホールをプレーしていること。いったいどこに向かっているというのか?タイムパー(1ラウンドのプレータイム)が機能するのは第1組くらいで、彼らが折り返し地点に到達する頃には、最終組のプレッシャーになってしまっている。われわれは、いつだってプレーペースを話題にしている」とすると、こう続けた。

「ロサンゼルスの高速道路のようなもの。車が多いから進む速度が遅い。もし通行する車の数が少なければ、さほど渋滞も起こらない。ただ、われわれはそういう状況にいて、対応しないといけないわけだから」。

「罰金はさほど意味がない」

ルール上、グループの中で最初にプレーする選手にはショットまで60秒が与えられ、それ以降の選手には40秒かけることが許されている。もし選手が制限時間を過ぎた場合、1度目は警告処分で済む。しかし、稀なケースながらも同じラウンドで2度目の警告を受ければ、1打の罰則が科される。2度目のスロープレーを警告された選手には5,000ドル、3度目以降の警告を受けると1万ドル、そして年間で10回スロープレー警告を受けた場合は2万ドルの罰金が科される。

「罰金というケースもあったが、これからは罰金額を上げようと考えている。選手達は大金を稼いでいるのでね。時代遅れの考えではあるだろうが」と話したホワイトだが、それには理由があった。

以前ツアープロだったホワイトは、1976年から79年にかけて賞金3万2,000ドルを獲得している。アトランタではトム・ワトソンとプレーしたシーズンもあったが、ワトソンがパー5の8番ホールでドライバーショットをグリーンに乗せた瞬間を目の当たりにし、「こんな奴に勝とうとしているのか?」と思うようになり、自身の将来を考え始めたという。

では、スロープレーを解消する手立てはあるのだろうか?ホワイトは、大規模大会での解消法は「ない」と主張する(『ザ・メモリアル』は120名だが、ホワイトは出場者の人数が問題ではないとも主張)。誰もが賛同する意見ではないだろうし、ノーマルなフィールドよりも狭いベイヒルでは、たいていの場合1ラウンド5時間以上かかるというように、選手内の議論を支持するデータもある。

PGAツアープロのウィリアム・マクガートは、「選手達はスロープレーをしても罰金処分しか受けないとわかっている。PGAツアーに出場している選手にとって、罰金はさほど意味がない。NASCARではポイントが奪われる。これからはポイントはく奪など、選手にとって本当に大事な部分をペナルティの対象にしてみたら良いんじゃないかな」と提案。またマクガートは、選手達に自覚させることも大事と主張する。

「まずは、選手自身がスロープレーヤーと自覚することが大事。おそらく、スロープレーヤーの95パーセントは自分が遅いとは思っていないはず。自分がスロープレーヤーと自覚しているのはベン・クレーンくらい。彼は自覚してから改善しようと努力している。自分のグループが予定時間から遅れているとわかると、グループのペースを戻そうと意識的に取り組んでいる」

ルールオフィシャルの苦悩「胃が痛かった」≫
1 2

2014年 フライズドットコムオープン