3位浮上のクーチャー 悲願のマスターズ制覇に再び近づく
ジョーダン・スピースの歩みはあまりにも速い。超新星の例は、確かにマット・クーチャーのキャリアには当てはまらない。しかし、どうやって目的地にたどり着いたかが問題ではない。そこに到達することに意味がある。スピースはもちろん、クーチャーにも「マスターズ」優勝のチャンスが舞い込んだのだから。
3日目を6バーディ、2ボギーの「68」としたクーチャーは、首位タイで並ぶスピースとバッバ・ワトソンと1打差で最終日を迎える。35歳は「ミスが少なかった。ここ数週間の調子を維持出来ているね。3週間連続して良いゴルフが出来ている」と、今週こそ結果が伴うことを祈っている。
クーチャーは2週続けて優勝争いに絡んだが、サンアントニオでの「バレロテキサスオープン」、ヒューストンでの「シェル ヒューストンオープン」の最終日に「75」、「72」と失速し、それぞれ4位タイ、2位として優勝を逃した。
実を言えば、過去2年の「オーガスタ」でも同様の結果となってしまっている。
2012年の「マスターズ」では最終日の15番でイーグルを奪い、首位に並んだが、続く16番でボギーとしてしまい、ワトソンとルイ・ウーストハイゼンとのプレーオフに加われなかった。
昨年は首位と3打差で最終日を迎えたが、「73」とスコアを落とし8位でフィニッシュした。
これこそ1997年の全米アマチュア王者が辿ってきた道のりなのだ。プロ転向後の8年で僅か1勝と苦しんだクーチャーは、クリス・オコーナーの指導を受けてスイングを改造した2009年以降5勝をあげた。
自身の進化についてクーチャーは、「色々と変えたことはあった。スイングに入る前に間を取るのを止めてみたり。自分のボールがどこに向かって飛ぶかわからない時もあったしね。今では自分のボールがどこに飛ぶか把握出来ているし、スイングも乱れない」と語る。だからこそ、今年のオーガスタナショナルで3日目までを終えて、42ホール中36ホールでティショットをフェアウェイに運べた。
そしてコースマネージメント力によってトラブルを回避出来ている。「自分のベストスコアを出す為に、どうプレーすれば良いかを理解出来ていると思うんだ。優勝するチャンスがあると思って、快適にプレー出来ている」。
そしてクーチャーには、もう1つ良い兆しとも言える出来事がある。祖父のモーリスさんが今週はオーガスタナショナルに来ているという。
1997年、休暇の際に家族でニューハンプシャー州を旅行した際、モーリスさんはグラスを掲げ、「『マスターズ』出場の前祝いだ」と乾杯前に声を上げた。それから2ヶ月後、クーチャーはコグヒルで全米アマチュア王者となり、オーガスタナショナルでの出場権を手にしたのである。