2014年 WGCアクセンチュアマッチプレー選手権

マッチプレーが持つ独特の難しさ

2014/02/19 12:57
昨年大会の決勝でクーチャーに敗れたメイハンは、過去2年の同大会で11勝1敗だ。(Stan Badz/PGA TOUR)

数分という短いスパンの間に、勝利と敗戦を繰り返す。期待された結末が、一瞬にして変わってしまう。

レティーフ・グーセンはボールを砂漠に打ち込み、アンプレアブルを適用した。ボールをフェアウェイに戻すと、190ヤードの4打目をホールに沈めバーディとした。ショートゲームが得意な選手として知られるブランド・スネデカーは、フェアウェイを捉えながらもウェッジショットをミスし50フィート地点までしか近付けず。4打目のパットを決め、グーセンとこのホールを引き分けた。

2選手がこれ以上に対照的な形で同じスコアを出すことは想像し難い。そして、これが米国ツアーの通常の大会で起きたことならば、面白いワンシーン以上にはならないだろう。しかし、本大会の第1ラウンドでは重要なことなのだ。グーセンとスネデカーは「WGCアクセンチュアマッチプレー選手権」での対戦相手だった。この対決は最終的に、エキストラホール3ホール目でスネデカーが勝利した。

「僕等は共に、そのとき起こったことに完全に驚きながらホールを後にしたよ」。パー5の13番で起こったことについて、スネデカーは話した。「これぞマッチプレーだ。何が起こるかわからない。こういうことがいつでも起こり得るんだ」。

出場する64選手の多くにとって、「WGCアクセンチュアマッチプレー選手権」はこの形式で戦う1年に1度の大会だ。マッチプレーには独特の難しさがある。

第1に重要なのは、誰も翌日のラウンドが保証されていないことだ。他のWGC大会では全選手が少なくとも2ラウンドをプレーする。米国ツアーの大半の大会は全選手が第2ラウンドまでプレーする。本大会に出場する64選手が保証されているのは、初日だけである。

このフォーマットにより、選手たちは最終ラウンドだけでなく、全ラウンドで絶対にパットを決めなければいけない状況に立たされる。通常は日曜日に目にするドラマが、初日から当たり前の光景になる。

「マッチプレーには特別な何かがあるね。復古的で素晴らしいフォーマットだよ」。昨年の大会で4回戦まで進んだグレーム・マクドウェルはそう話した。マクドウェルは本大会で通算13マッチを戦い6勝7敗。2010年には「ライダーカップ」で決勝のポイントを挙げ、またその年は全米オープンで自身初のメジャータイトルも手にした。2013年には「ボルボワールドマッチプレー選手権」も制した。

ジャスティン・ローズも「ライダーカップ」でのマッチプレーで記憶に残る瞬間を持っている。2012年に劣勢からフィル・ミケルソンに勝利し、欧州チームの逆転勝利に貢献した。ローズは2ホールを残し1ダウンだったが、17番で35フィートのバーディパット、18番でもバーディを決め1アップで勝利した。

「マッチプレーではいつも重要なパットがあるんだ」とローズ。「全てのパットを、日曜日のバックナインのような気分でプレーしなければならない。第1ラウンドからそうなんだ」。

マッチプレー方式は、アマチュアの大きな大会で多く採用されている。「全米プロゴルフ選手権」「全英アマチュアゴルフ選手権」「ウェスタン・アマチュア」などがそうだ。「NCAA選手権」は2009年からこのフォーマットを採用している。

プロの選手たちがこのフォーマットでプレーすることはめったにない。フォーマットが違っても、可能な限り少ない打数でボールをホールに沈めるという目的は変わらない。しかし、戦う相手が変わるのだ。フィールド上に立つ156人の選手ではなく、目の前にいる人間のみが相手となる。選手たちは、この違いが自身の戦略にどう影響を与えるかを考えなければならない。

マット・クーチャーは、マッチプレーを最も得意とする選手のひとりだ。1997年には「全米アマチュア選手権」を制した。「WGCアクセンチュアマッチプレー選手権」では15勝3敗の好成績を残しており、過去3年はいずれも4回戦以上を戦っている。通常の試合でもマッチプレーでも、彼の戦略は変わらない。昨年の本大会では、自身初のWGCタイトルを獲得した。

「通常の試合と違うことをしてチャンスが生まれることは少ないよ」とクーチャー。「いつもと同じように、状況に応じたベストショットを打つのみさ。狙うべきピンがちゃんとある。たとえば相手がバーディを奪いそうだったら自分もより積極的に攻めるなど、多少の戦略変更は有り得る。でも、基本的に僕の戦略はいつもと変わらないよ」。

それでも、マッチプレーではより積極的なプレーをする選手たちはいる。大失敗をしたときのダメージが小さいからだ。パーの4倍のボギーは、通常ならその週を台無しにするが、マッチプレーでは1ホールの敗戦に過ぎない。「好きなだけ失敗していいんだ。もし9ホールでひどいプレーをしても9バーディを奪えば、そのマッチを勝利する可能性は充分にある」。今月の「ヨハネスブルクオープン」を制し、今大会への出場権を得たジョージ・クッツェーはそう話した。

2012年大会を制したハンター・メイハンは「最初のティオフから」積極的にプレーしたと話した。昨年大会の決勝でクーチャーに敗れたメイハンは、過去2年間の大会では11勝1敗だ。メイハンのマッチプレーでの強さはアマチュア時代にまで遡る。1998年には「全米ジュニアアマチュア」を勝利し、2002年の「全米アマチュア」ではリッキー・バーンズに次ぐ2位だった。

リー・ウェストウッドも、メイハンに近いスタイルで戦う。72ホールを戦う通常の大会では「無難な」スタートを切ることを好むが、マッチプレーについて聞くと陸上競技にたとえてこう話した。「早くコーナーを周りたいんだ」。

この独特のフォーマットにどのように臨もうと、ひとつ確かなことがある。「遅かれ早かれ、対戦相手のプレーを見ながらプレーしなければならない」とロリー・マキロイは話した。これがマッチプレーの美しさだ。

2014年 WGCアクセンチュアマッチプレー選手権