2013年 ザ・プレーヤーズ選手権

交通事故で重傷を負ったスタッフ、傷痍軍人…ザ・プレーヤーズ選手権を支えるボランティア

2013/05/12 15:35

By Michael Curet, Special to PGATOUR.COM

TPCソーグラス・スタジアムコースの名物ホール、17番でスタッフを統括するR.スミスさん。(Chris Condon/PGA TOUR)

「ザ・プレーヤーズ選手権」の17番ホールで長年スタッフとして働いているロン・スミスさんは、ここ4大会、Wounded Warriors(戦争で負傷した軍人を支援する非営利団体)から数人のボランティア要員をチームに加えている。この試みは、傷痍軍人に大会の重要な役割を担ってもらうだけではない。自ら費用負担をしているスミスさんは、国に奉仕してくれた人々を称える機会を提供しているのだ。

今年の17番ホールでは、同団体からネイサン・リンさんとケビン・ガーランドさんがボランティアとして派遣され、英雄として大歓迎を受けた。

2012年9月8日、スミスさんは交通事故で命を脅かす大怪我を脊髄に負った。当時は歩けず、4カ月の入院を余儀なくされた。今大会期間中も、歩くより車椅子に座っていることの多いスミスさんだが、勤続年数は歩みを止めることなく、堂々の15年目だ。医者は認めていないものの、同氏は自身がここまで回復しているのは、他でもない「ザ・プレーヤーズ選手権」のおかげだと主張する。

「他にもっと負担の少ない仕事をオファーされたけれど、私はこの17番に残ることを選んだ」と、75人ものボランティアスタッフを統括するスミスさんは言う。同氏は、米健康保険会社Blue Cross Blue Shieldのジャクソンビル支店で、2年前に退職するまで38年間マネージャーとして働き、マネジメントスキルを培った。「このホールはこの大会の縮図であり頂点だ。私はずっとそう考えてきた。だから今年もここに帰って来ると決めたんだ」と語る。

スミスさんは、自身の身体の状態と、Wounded Warriorsから来る軍人たちとは比較にならないと言う。「アメリカを守るため、彼らが戦地で戦ってきたことは何事とも比べることはできない」と主張する。「自分の怪我と同じレベルで話をするつもりは毛頭ない。というもの彼ら軍人が体験してきたこととは比較にならないからだ。彼らの多くは手足を失ったり、精神的なトラウマを抱えていたり、大変な傷を負って苦しんでいる。私は治療を続けていて、ここまで回復できたこと、それを周りで支えてくれた友人にとても感謝している」と明かす。

交通事故が起きた時、スミスさんの車は横転した。そして同氏は、首の骨、肩、手脚、そして多くの椎骨を骨折した。幸運なことに、脊髄は傷ついたものの致命傷には至らなかったという。結果、右半身が半不随状態となったものの、将来的な回復の可能性を残した。

「今も私の腕、手、足はままならないよ」。スミスさんはそう言いながらも、「ただ事故当時、私はこの先何ができるようになるか全くわからないまま病院のベッドに横たわっていた。自分の顔を掻くことすらできなかったんだ。だが、電動車椅子から始めて、普通の車椅子になり、杖で歩くことが出来るようになり、家の周りを歩けるまでになった。医者は、私ぐらいの怪我をした人はだいたい半身不随か四肢不随になると言っていた。こうして私が歩いていることは奇跡なんだ」と明かす。

大会2日目、スミスさんが12時間シフトの仕事を終わろうとする頃には、折にふれてギャラリーの中から友人がやって来て激励の言葉をかけた。そんな時スミスさんはいつも、苦労しながらも、友人たちに自ら歩み寄って、嬉しそうに出迎えた。今年の「ザ・プレーヤーズ選手権」も、半分が終えたばかり。しかし、スミスさんの“歩み”に一切の迷いはない。今年も自らの務めを果たしながら、さらなる回復へと向かう。

2013年 ザ・プレーヤーズ選手権