ウッズ&ミケルソン ライバル関係再燃か!?
フィル・ミケルソンが、その週のコース戦略を実践する様子を見るのはいつだって爽快だ。裏付けが必要というのなら、先週のウェイストマネジメント フェニックスオープンで28アンダーという素晴らしいスコアを出し、ブラント・スネデカーに4打差をつけて優勝したことで十分に合点いくだろう。
タイガー・ウッズが、ファーマーズインシュランスオープンで優勝してから1週間。ダスティン・ジョンソンが、今シーズン開幕戦のヒュンダイトーナメントオブチャンピオンズで優勝してからわずかひと月という、シーズン序盤のこの時期。PGAツアー優勝者リストに、ミケルソンまでもが名を連ねるとは、なんとも喜ばしいニュースではないか。
実績十分のチャンピオンたちが、シーズン序盤から優勝争いを展開するなんて、今年は贅沢な幕開けだ。今はまだ、マスターズについて話を始めるには早すぎるくらい、地面に雪は残っているし、天気予報でもまだ雪の話題がちらほら聞こえてくるけれど、2013年がどんなエキサイティングな年になるのか、期待に胸を膨らまるのに早すぎってことはない。
さぁ今週は、AT&Tペブルビーチナショナルプロアマが開催される。好調ミケルソンは前年度王者として登場する。彼が先週、乾いた空気のスコッツデールで成し遂げた完全優勝とは違い、昨年のペブルビーチでのミケルソンは、トップのウッズを6打差で追いかけ、54ホールを終えた時点でも、既に「64」でホールアウトしたチャーリー・ウィを追いかける立場だった。
まさに去年のミケルソンは「コースを戦略する能力」を実践してくれた。彼のゲーム運びは爆発的ではあるが時に予測不可能で、この上ない芸術性を発揮することもあれば、理解しがたい大失敗を引き起こす可能性もある。彼は首位に立っていようが追う立場であろうが、常にスリルと隣あわせのゴルファーだ。
日曜日の17番ホール、3番ウッドでのティショットが池から1ヤードほどの位置に落ちてしまったのが良い例だ。ナイアガラの滝を横切って綱渡りでもしようとする人に群衆が見入ってしまうのと同じ理由で、彼のショットはファンを惹きつけるのだ。
ゴルフチャンネルのコメンテーターであり、かつてツアープロとして活躍したフランク・ノビロは、「フィルはジェットコースターの上で産まれた子なんだよ」と、ジョークを飛ばした。
ミケルソンの能力のひとつは、高いリスクを伴うショットを成功させるか、あるいは池に落ちるボールを見届けるか……という時ですら、自身を冷静にコントロールする術を有することだ。“なんてこったい”と頭を振ったり、飛びきりの笑顔を見せたり、時には親指を立てて“サムアップ”したりしながら。
七変化する彼の表情は、かの偉大なアーノルド・パーマーを彷彿させる。ミケルソンファンへのアピールと、パーマーがかつて、日曜日の最終日、NBCの最終ラウンド中に起こした出来事とを比較して、コメンテーターのピーター・ジェイコブソンはこのように話をまとめた。
「フィルが昇りはじめ、アーニー(パーマー)が去る時のようだね」と。
ジェイコブソンは現役時代、ミケルソン、パーマーと共にプレーをしている経験豊富なゴルファーだ。42歳のミケルソンは、彼の飛距離がどれほど衰えてきているのかを知っているが、彼が先週魅せたツアー通算41勝目には説得力があった。プロデビューから21年を経た今でも、まだたくさんのゲームに出場し、成績を残すことができるという意味で。そう、覚えておこうではないか。フィルが先週、あわや「59」のラウンドを達成しかけた事実を。先週の木曜日、最後のあのパットがカップに蹴られてしまったことを。
これらすべての出来事が、今から2週間前、今季のツアー初勝利のみならず、2008年以来の優勝を成し遂げ、元気を取り戻したかに見える37歳のウッズとの間で、新たなライバル関係を巻き起こす要因となり得るのだ。トーレパインズゴルフコースで行われた大会での優勝が7度目となったウッズの活躍ぶりは、何か簡単なルーティーンのようにさえ見えてしまう。しかしそこには、偶然をはるかに越えた大きな意義がある。
ウッズが過去、トーレパインズの優勝でシーズンを開幕した年は、ビッグイヤーとなることがよくある。まさに復活の前兆だ。これまで優勝した7度のうち5度は、その年のメジャー大会でも優勝し、さらにそのうち2年に至っては、年間メジャー大会2勝を記録しているのだ。(メジャー大会優勝14回のウッズだが、最後のメジャー優勝は2008年の全米オープンまでさかのぼることも付け加えておこう。)
重要と思われることは、書き留めておくべきだが、先週のミケルソンの完全優勝は、ロリー・マキロイが2010年のコングレッショナル・カントリークラブで行われた全米オープンで完全優勝をして以来のことだったのだ。
世界ランキングで26週もの長きに渡って1位をキープしているマキロイの存在をほのめかすのは、(この時点で議論がシャープになるという観点からも)いろいろな意味で適切だと言えるだろう。ご存知のとおりマキロイは、およそ1ヶ月に渡ってツアー参加を見合わせていて、その2週目を終えて今なお、好調ウッズを抑え快調にトップに留まっているのだが、トップ10はいくつもの動きが見える。
ミケルソンは、先週の優勝でランキングを22位から10位に引き上げた。首位のミケルソンに追いつこうとベストを尽くして「64」の成績だったスネデカーは、6位にまで順位を上げてきた。
次の数週間、世界ランクの上位争いに一体何が起こるのだろうか。それは誰にも予測できない。マキロイが首位に立ってはいるものの、年が明けた2013年のPGAツアーではプレーしていないのだ。彼の今季初戦は、おそらくWGC-アクセンチュアマッチプレーチャンピオンシップになるだろう。
前年王者のミケルソンは、新しいドライバーに慣れていることをすでに周囲に示している。「今は、このクラブがとても使いやすい。それは事実だ。新しいドライバーが、今シーズン(の結果)を変えてくれる。本当にそう思うよ」と公言しているほどだ。
しかし、忘れてはならない。フィルがラフに打ち込んだら、ロープの奥の大観衆のなかに埋もれてしまった彼の姿が見えなくなくなってしまうことだってある。それもゴルフの一部なのだ。数えきれないほどのナイスショットでフェアウェイを捉えたとしても、その次のショットで危険な目にあうことだって大いに起こり得る。そういった可能性を、フィル・ミケルソンというゴルファーは十分に秘めているのだ。