週末2日間ノーボギー イタリア初のメジャー王者誕生
◇メジャー第3戦◇全英オープン 最終日(22日)◇カーヌスティ(スコットランド)◇7402yd(パー71)
大混戦の最終日は最も静かな男が制した。6アンダーの5位から出たフランチェスコ・モリナリが2バーディ「69」をマークし、通算8アンダーとして後続に2打差をつけて逃げ切った。イタリア勢として初のメジャー制覇。週末の36ホールで一度もボギーをたたくことなく、同組でプレーしたタイガー・ウッズも破ってみせた。
敵は目の前のひとりだけではなかった。3日目を終えて首位に立っていた3人が序盤から後退し、戦況は混とんとした。他の組の多くの選手にもチャンスが芽生え、同じ組のウッズがハーフターン時点で単独首位に立つと、周囲は一様に“復活優勝”を期待した。「明らかに注目は僕になかった。誰かのチャージを期待したとしても、それは僕への期待ではない」。でも、それが何だと言うのか。「僕のキャリアと同じだ」。モリナリは静かに自分の仕事に徹した。
コースのあらゆるところで歓声が響くのを耳にしながら、パーを並べた。もっとも易しい後半14番(パー5)で最初のバーディを奪い、7アンダーとして終盤で首位に。グリーンを外した16番(パー3)で右ラフからのアプローチを寄せると、最終18番では1.5mを沈めて逃げ切りを決定づけるバーディを奪い、ガッツポーズを作った。最終組のザンダー・シャウフェレの18番の第2打がカップに収まらなかったところで決着。プレーオフに備えたパッティンググリーンで歓喜した。
兄のエドアルド・モリナリとともにイタリアのゴルフシーンを引っ張ってきた35歳。「信じられない気分。クラレットジャグが目の前にあることが驚きで仕方ない。いいゴルフをしているつもりだったけれど、ここで達成した記録は恐ろしいくらいだ」。
今年は5月に欧州ツアーの旗艦大会「BMW PGA選手権」で優勝。翌週の「イタリアオープン」でも2位に入る活躍を見せた。主戦場の米ツアーでは6月まで来季シード権のキープが不安だったが、3週前のウッズのホスト大会「クイッケンローンズ・ナショナル」で米ツアー初優勝(ツアーメンバー登録前に優勝した2010年WGC HSBCチャンピオンズ優勝を除く)。勢いをこのメジャーでも持続させた。
全英の出場は今回が11回目。これまでの自己最高位は2013年大会(ミュアフィールド)の9位タイだった。「今週は米国から月曜日にこっちに来て、数ホール歩いたんだ。地面が硬くて、速かったけれど、ラフはそれほどでもなかった。ミュアフィールドを思い出したよ」。当時、最終日に2サムでプレーした相手は優勝したフィル・ミケルソンだった。「フィルと回ったことが本当に良い経験になったんだ」。5年前にビッグレフティから得た勝つための術で、ウッズ一色のカーヌスティを制した。(スコットランド・カーヌスティ/桂川洋一)