2018年 全米オープン

「ルールを戦略的に使っただけ」ミケルソンの行動とUSGAの裁定に波紋

2018/06/17 18:15
サインに応じてコースを去るミケルソン。人気選手が起こした行動をファンはどう受け止めている?

◇メジャー第2戦◇全米オープン 3日目(16日)◇シネコック・ヒルズGC(ニューヨーク州)◇7445yd(パー70)

「ルールを戦略的に使っただけ」。そう話すフィル・ミケルソンの行動と、全米ゴルフ協会(USGA)の裁定が波紋を呼んでいる。

ミケルソンは後半13番で下りのパットを打ったあと、小走りでカップを逸れたボールを追い越し、まだ動いているボールをカップに向けて打ち返した。ゴルフ規則14-5より2罰打を受けたが、「罰打と理解した上でやった。喜んで受け入れる」と故意の行動であることを認め、悪びれる様子もなかった。

ミケルソンがホールアウトすると、報道陣がアテストエリア付近の取材スペースに殺到。30分後に姿を現したミケルソンは経緯を述べた。厳しいコースセッティングで、かりに違反をしなかったらボールは傾斜を転がりグリーンを出ていたという。「早く次のホールにいきたかった。ペナルティの方が良いと判断した」と釈明した。

USGAは全組終了後に会見を開き、マイク・デービスCEOは「ルールに従いペナルティを科した。意図に関係なく動いているボールを打ったので2罰打」と説明。報道陣からはゴルフ規則33-7に基づく失格の判断も問われたが、「議論で出たが、その規則は非常事態でしか使われない。今回は適用されない」と明言した。

各メディアはミケルソンとUSGAを激しく非難し、米スポーツ専門局のESPNは「棄権して謝るべきだ」との見出しで報道。メディアの批判的な記事を目にしたミケルソンは“最終日は棄権をするべきか”とUSGAに問い合わせたが、「罰打を受けたのだからあすもプレーできる」と返答したという。

この日は午後からグリーンの硬さと風速が増し、3日目終了時点で通算アンダーパーがいなくなる厳しいコースコンディション。14年前に当地で「全米オープン」が開催されたときも、あまりに硬く締められたグリーンは批判の的になった。今年も、ストレスの溜まるセッティングであったことは間違いないだろう。

しかし、動くボールを故意に打つのは前代未聞のことで、スポーツマンシップに背く行為と受け止められても無理はない。メジャー5勝、ツアー通算43勝を誇る輝かしい実績はもちろんのこと、ファンサービスも超一流で老若男女に愛されるスター選手が起こした行動に、ゴルフ界に大きな衝撃が走っている。(ニューヨーク州サウサンプトン/林洋平)

<ゴルフ規則>
【14-5】動いている球をプレーした場合
プレーヤーは、自分の球が動いている間はその球をストロークしてはならない。

規則14-5の違反の罰
ストロークプレーでは2打

【33-7】競技失格の罰;委員会の自由裁量権
委員会は、正当な措置と判断したときは、例外的な事例に限って、個々に、競技失格の罰を免除したり修正することができ、また逆に、競技失格とする規則がなくても競技失格の罰を課すこともできる。競技失格の罰よりも軽い罰は、どのような場合も免除したり修正してはならない。委員会はプレーヤーがエチケットの重大な違反に当たると考えた場合、規則33-7に基づいて競技失格の罰を課すことができる。

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