「ジョーダンかよ!」松山英樹がスーパーパット連発で決勝へ
◇米国男子◇AT&Tバイロン・ネルソン 2日目(18日)◇トリニティフォレストGC(テキサス州)◇7380yd(パー71)
うっぷん晴らしの猛チャージだ。初日1オーバー120位タイと出遅れた松山英樹は8バーディ、ボギーなしの「63」をたたき出し、20位タイで2戦ぶりの決勝ラウンドに進んだ。パッティングが復調し、後半17番(パー3)で12mの下りのスネークラインを沈めるなど、鮮やかに3連続バーディフィニッシュを決めて急浮上した。
打てども、打てども入らない…前日の流れはこの日の序盤も続いた。出だし1番で3mのチャンスを外してから、松山のバーディパットは5番までカップをなめ続けた。悪いリズムを断ち切ったのは6番。下りの3mを丁寧に流し込むと、続く7番(パー5)では段を下る第3打のアプローチを1mにつけて2連続バーディを決めた。折り返しの9番ではウェッジでのミスショットの後、8mを沈めて3つ目。続く10番でも10mをねじ込んだ。
“きっかけ”をつかんだのは前日のラウンド後だったという。猛暑の中、2時間近くパッティンググリーンに居残り、サポートスタッフもろともスマートフォンに残る過去のストローク映像をあさった。「良かったころの動画を見ながらやった。結果としてまっすぐ転がせていて、距離感も合っていた」と状態は激変した。
苦労していたラインの読みも「打ち方が変わって読みも集中できたというか、イメージが変わった」という。自信をよみがえらせて迎えた締めくくりは圧巻だった。16番では、「唯一のミスパット」という10mのバーディパットが転がり込む。そして17番。下りの12mで大きく左に打ち出すと、スライスラインから今度はフックラインに乗り、カップの左フチからボールが消えた。
背中越しの巨大スタンドは大騒ぎ。同組のマット・クーチャーは「ジョーダン・スピースかよ!」と恍惚の表情で言った。ただそれも、松山にとっては「完全にイメージ通り。練習ラウンドでも同じようなラインをやっていた。『スピードが合えば入る』感じだった」という一打だった。
この日、計18ホールで決めたパットの距離は184.2フィート(約56.14m)。前日49.9フィート(15.20m)の3倍以上の長さを決めたことになる。パット技術の指標であるストローク・ゲインド・パッティング「+5.122」は全体1位だった。ただ、ロングパットが多く決まっただけでは満足には至らない。「そういう意味で、18番で(3mのバーディパットが)入ったのはうれしかった」。最後に得意のショットとパットがかみ合ったことを喜んだ。
2016年6月(ザ・メモリアルトーナメント、全米オープン)以来となる2試合連続の予選落ちを回避するどころか、ジャンプアップして週末を迎える。安堵感を浮かべつつ、松山は冷静に物事を見極めようとした。「悪いものが一気に出ると、逆に怖さもある。“なんで良かったのか”をしっかり考えて頭の中で整理できたらいい」。昨年10月の「CIMBクラシック」第3ラウンドに並ぶ今季ベストスコアは、大きな通過点だ。(テキサス州ダラス/桂川洋一)