岩田が笑った 本人はアピールしないけど…3打差追って誕生日の最終ラウンドへ
鉛色の空の下に霧が立ち込めた米国男子ツアー「ファーマーズインシュランスオープン」3日目。前日までの明るい太陽は一瞬しかその姿を見せなかったが、岩田寛の表情は晴れやかだった。5バーディ、1ボギーの「68」で回り、通算6アンダーとして9位タイまで浮上した。
岩田が笑った。後半8番でこの日5つめとなるバーディパットを沈めると、グリーンを囲むスタンドに陣取ったほろ酔いの観客からは、威勢の良い掛け声が飛んだ。カップから球を拾い上げた岩田は照れくさそうに笑顔で応え、同組のアーロン・バデリー(オーストラリア)とにこやかに言葉を交わした。
この日の「68」は、ヨナス・ブリクスト(スウェーデン)の「66」に次ぐ、2番目の好スコア。それでも「今日は風とピン位置が伸ばしやすく感じたので、もうちょっと伸ばしたかった」と悔しがった。
3戦ぶりにカットラインのプレッシャーから解放されたが、「それは関係ない」と岩田は言う。15番の2打目は右へ出たミスショットが傾斜で跳ねてピンへ寄り、17番はフィニッシュで手を離したアイアンショットが、ギリギリで深いバンカーの先に落ち、跳ねてグリーンまでたどり着いた。
「ミスの範囲がここ最近では狭かった」と評価するが、まだショットに関して確かな手応えは口にしない。「昨日よりは良くなったけど…、明日になってみないと分からない」。それでも、深いラフから花道を使ってグリーンへと転がし上げたり、グリーン脇のラフからロブショットでピンそばへ運んだりと、随所に技を見せつけた。
過去、岩田がPGAツアーでトップ10入りしたのは、2014年の「WGC HSBCチャンピオンズ」で3位に入った一度だけ。もし最終日にトップ10以内をキープできれば、現時点で出場資格のない次週「ウェイストマネジメント フェニックスオープン」にも滑り込める。
明日に向けてのコメントを求められた岩田。「そうですね、なんだろう…」と、しばし考えて口にしたのは「まあ変わらないんで、調整して備えたい」というひと言だった。最終日は自身35回目の誕生日。そんなことを、自分からアピールするような男ではない。(カリフォルニア州ラ・ホヤ/今岡涼太)