子供の頃からの夢 デイが世界の頂点に
「ここ何日かは、ほとんど眠れなかったんだ」とジェイソン・デイ(オーストラリア)。「そのことを考えると、いつも眠れなくなってしまうんだよ」。デイが長く憧れ続けてきた世界ランク1位の座が、すぐそこまで迫っていた――。
イリノイ州にあるコンウェイファームズGCで行われた米国男子ツアーのプレーオフシリーズ第3戦「BMW選手権」で、初日「61」、2日目「63」のビッグスコアで飛び出したデイ。「大きなリードだったから、それを失いたくなかった。あれだけ大きくリードして、負けるなんて、個人的にすごくみじめなことだから」。向かうところ敵なしに見えたデイにも、重圧が重くのし掛かっていた。
デイが初めて世界1位となる夢を抱いたのは13歳のときだったという。プロ転向した18歳のころに、それは具体的な目標へと変わっていた。それを支えたのは、少年時代からコーチとして、そして現在はキャディとしてデイのそばに立つコリン・スワットン氏だった。
「我々には計画があった。22歳で世界ランク1位になろうと話していたんだ。そのために、これをやらないといけない。これを練習しないといけない。5年ばかり遅くなったけど、実現しないよりは、遅れる方がいいだろう?」とデイは笑った。
この日も、スワットン氏はデイのスタート前に18ホールを歩いたという。「だから、僕たちは5番と13番のピンポジションが特に難しいから用心しないといけないと知っていた。他のキャディでもそうしている人はいるんだろうけど、そういうほんのささいなことで、少し多くの情報を仕入れられる。それが、より良いプレーにつながったり、トーナメントで優勝することにつながると思う」。
そんな“ちょっと”を積み重ねて、ついにたどり着いた世界の頂点。「子供の頃から世界の頂点に立つというイメージは持っていたけど、今現在、この地球上で自分が一番うまいゴルファーだっていうのは、とってもクールだね」とデイ。「でも、現実のことではないみたい。自分はまだ普通の男で、ただゴルフボールを打つのがとてもうまいだけなんだ」。このすごさと普通さのバランスが、ロリー・マキロイ(北アイルランド)、ジョーダン・スピース、それにデイと、ここ数カ月で世界ランク1位の座についた3人の共通項だ。
デイはオーストラリア人として史上3人目で、かつ最年少で世界1位に上り詰めた。その先に夢見るのは「キャリアグランドスラム」だと胸を張った。だがその前に、次週がフェデックスカッププレーオフの最終戦。直近で6戦4勝のデイが、さらなる栄冠を積み重ねるか?(イリノイ州レイクフォレスト/今岡涼太)