キャリア最悪の故障を経て臨む、松山英樹の2015年マスターズ
<2015年マスターズへ 松山の戦略>
「ケガのことを考えると、今思うとよくやっていたなあと思います。テーピングしながらよく頑張っていた(笑)」
痛みが軽減されてきたのはマスターズから数週間後、痛みのある左手親指だけでなく、ひじと前腕への治療が光明をもたらした。
決して短くはない故障期間を乗り越え、松山は副産物ともいえる変化を感じているのだ。
「今は痛いところが出ても、短い時間で治るようになってきている。正直に言えば、左手の痛みも、たまに出ますよ。でもそういった時でも、プレー中にコース内で自分がどこを触ればいい(痛みが和らぐ)、といったことが分かるようになってきた」
「自分自身がここが痛いなら、ここを揉んだらいいとか、分からなかったことが少しずつ勉強だと思える。ここは、こことつながっているんだと、ちょっとずつ、今までよりは分かってきた。ケガをしたことで、体に対する意識が強くなったと思う」
松山はその都度、細かい目標を設定するのを嫌う。だが、2015年こそはと4大メジャーでの活躍を胸に期するのは、言わずもがな。
「マスターズまでに自分のスイングなんかを、固めることができれば一番強いんでしょうけど、それは簡単にうまくいくものではないから。試合中に少しでも、考えるポイントが少なくなればいい」
「ショット、アプローチ、パター…と、今はそれぞれ考えることがある。例えばショットだったら、3つ、4つ意識しているポイントもある。それが2つくらいに減らせて、アプローチも、パターも(注意点を)2つくらいにまでできれば…考えることが半分くらいになれば、すごくシンプルにプレーできてくると思う。意識していなくて、できない時もあるから、見る人に話を聞いたりすることも大切。2ラウンドに1回悪かったものが3ラウンドに1回になって、4、5ラウンドに1回になって…と減っていけばいい。1ホールずつでもいいところが増えていけばいい。そうやっていくしかないんですよ」
12月にタイガー・ウッズのチャリティ競技「ヒーローワールドチャレンジ」を戦った後、松山は約1カ月、試合スケジュールのない時間を過ごしている。
「2015年は…まずは、オーガスタまではとにかく頑張ろうと。僕はまだオーガスタで優勝争いをしたことがない。マスターズに勝つために何をしたらいいのか、しっかりと見たいと思います。試合がたくさんあるから、その都度オーガスタのことを考えることはできないかもしれないけれど」
束の間ともいえるオフも、神戸市内のジムを訪れるなどハードなトレーニングを積んで、シーズン再開への準備に勤む日々。
「年末年始は息抜き?ふん、抜けるわけないでしょう」。鼻で、笑われた。(おわり)
(取材・構成/桂川洋一)