亡き父のメッセージはタトゥーに 23歳アマのサム・ベネットが優勝争い

◇メジャー第1戦◇マスターズ 2日目（7日）◇オーガスタナショナルGC（ジョージア州）◇7545yd（パー72）

「マスターズ」の長い歴史でアマチュア選手の最高成績は2位。1956年、ケン・ベンチュリーは初日から単独首位を走り、最終日にジャック・バークJr.に逆転された。半世紀以上前のことを23歳は「申し訳ないけれど、よく知らない…」。けれど、まさに今、快挙のチャンスが目の前にある。

テキサスA＆M大のサム・ベネットは昨年の「全米アマチュア」を制し、オーガスタへやって来た。大会前は特別招待で参加の飛ばし屋、ゴードン・サージェント（バンダービルト大）に話題をさらわれ、ちょっぴり悔しい思いも抱えながら初日に「68」と好発進。仲間たちからの祝福メッセージが止まらず、「電話の電源を切って眠ったんだ」という翌日にも、同じスコアを出した。

悪天候による順延の前に通算8アンダー、暫定3位で2日目を終えた。単独首位のブルックス・ケプカには4打差と絶好の位置。「みんなが今週、ローアマを獲れるといいねと言ってくれたけれど、僕はとにかく良いラウンドを2つ続けたかっただけ。自分が良いプレーをすれば、ここで戦えると思っていた」と自信を深める。

丁寧にプレーを進めるあいだ、ベネットは時折、左の前腕に目をやる。黒い字で記された英文はタトゥー。”Don’t wait to do something”（やるべきことを待つんじゃない。迷わずに）というテキストは亡き父の言葉だ。晩年、若年性認知症と闘ったマークさんにお願いし、メモにペンを走らせてもらったメッセージを他界する直前に肌に刻んだ。

「モチベーションを高めている。オーガスタナショナルでの僕の姿を見たら、どれほど彼は喜んでくれるか分かっている。今週は一打に集中するために、これを見ているんだ」。マークさんは当時、15分かけてメモにアルファベットを並べたという。見た目には弱々しくもある筆跡からは、無限のパワーが湧いてくる。