グリーンジャケットの持ち出しは1年限り/マスターズチャンピオンの世界
◇メジャー第1戦◇マスターズ 3日目(9日)◇オーガスタナショナルGC(ジョージア州)◇7510yd(パー72)
「マスターズ」の前回大会王者には毎年、ディフェンディングチャンピオンとして課せられる仕事や、伝統的なしきたりがある。松山英樹は2022年、その世界に初めて足を踏み入れた。
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チャンピオンに贈られるグリーンジャケット。優勝が決まった後、選手はまず中継局CBSのインタビューエリア「バトラーキャビン」で袖を通す。
2021年4月11日。「バトラーキャビンに入るところに、サイズ違いのジャケットがたくさん並んでいる。『どれがいい?』と聞かれたので、僕は少し大きめのサイズを選びました」と松山。「あったかいものに包まれ感じ」。前回大会王者のダスティン・ジョンソンに着せてもらった瞬間は、厳かで、甘美だった。
グリーンジャケットは初回大会の3年後の1937年に登場した。発端は創始者のボビー・ジョーンズが英国ロイヤルリバプールでの開かれたディナーで、各クラブのキャプテンがそろいのジャケットを着用している姿に感銘を受けたという説、クリフォード・ロバーツ氏がオーガスタでメンバーを見分けるために製作したという説がある。優勝者に贈られるようになったのはサム・スニードが制した49年大会で、今に至る。
ジャケット授与のため、前回大会の勝者は仮に予選落ちしても週末もコースに残る義務がある。ちなみに過去に連覇した3人の状況はというと、66年のジャック・ニクラスは自ら着用、90年ニック・ファルド(イングランド)と2002年のタイガー・ウッズはそれぞれ当時のチェアマンがプレゼンターになった。
優勝者がグリーンジャケットをオーガスタナショナルGCの外に持ち出せるのは“ディフェンディングチャンピオンである期間”だけ、つまりほとんどの場合1年間だけという決まりがある。その間も着用して公の場に出たり、メディアに出演したりするにはオーガスタの許可が必要だ。
昨年の優勝後、ジャケットを片時も手放すことなく帰国便に乗り込んだ松山の姿は米国でキャッチされSNSで拡散された。帰国後は、オーガスタから届いた名前入りのガーメントバッグに包まれて日米を往復した。