「20点」の自己採点から“スピース的”圧勝 畑岡奈紗の勝ち切る力
◇米国女子◇DIOインプラントLAオープン 最終日(24日)◇ウィルシャーCC (カリフォルニア州)◇6447yd(パー71)
スタート時点でのリードは4打、ハーフターン時には5打。畑岡奈紗はそれでも攻める気を失わなかった。「目標は15アンダーにすること」と、目の前のハンナ・グリーン(オーストラリア)のプレーには目もくれず前半アウトで4バーディ。ティオフ時の緊張から解かれ、唯一のピンチと言えた6番も5mのパットを沈めてボギーで収めた。
「17番、18番が難しい。(それまでに)3打差は絶対に欲しいと思っていた」。後半15番、15mの下りのイーグルパットを沈めてついに6打差にしても、16番の5mのバーディチャンスも逃すまいと時間をかけ、必死にラインを読みこんだ。
今季初めからショットに悩み、前週の「ロッテ選手権」で予選落ち。初日に「67」をマークしても、出来は「20点くらい」と焦燥感を募らせていた。それが2日目の前半のラウンド中にスイングのきっかけをつかんだことで、一気に復調。週末に再び「67」を並べて、他を寄せ付けなかった。
「比べることではないかもしれないけれど、ジョーダン・スピースがマスターズで予選落ちして、(翌週の)RBCヘリテージで優勝した。『ビッグチェンジがある』と今週、自分でも経験できた」。状態は劇的に上向き、「まだ100yd以内のショットには課題が多い。ティショットも置きに行っている部分もある」とこぼしつつ、「いまは70点くらい」と自己採点も上がった。
「全米女子オープン」「東京五輪」のメダル争いで惜敗した2021年。米ツアーで挙げた2勝はすっきり飾ったものではなかった。7月「マラソンクラシック」は悪天候で最終日が中止となり、ティオフ直後に中断しそのまま優勝。9月「NWアーカンソー選手権」では最終ホールで2オン3パットのパーとして1打差で辛くも逃げ切り。ただ勝つだけではない、「圧倒的に勝ちたい」という完璧主義者の思いは、頂点を目指す23歳ならでは。その矜持(きょうじ)が垣間見える5打差勝利になった。
3日目に世界ランク1位のコ・ジンヨン(韓国)と首位を争い、競り勝った。「すごく意識した部分はあった」と明かす。終盤17番、コがクリークからの脱出に失敗し「8」をたたいたことで優勢になったが、直前のタイで迎えた16番で畑岡がバーディを奪い、一気に2打差(コはボギー)にしてプレッシャーを与えたことも勝負を分けた場面だった。
通算6勝目。期待されているもの、期待され続けているタイトルは分かっている。今年のメジャーは残すところ4つ。「過去5年で近いところまでは行っている。1打もないくらいの差もあった。その差を埋めるためには100yd以内のショットだと思っている。次のメジャー、全米女子オープンまでに自信を持って打てるようになりたい」。苦しみ抜いて手にしたシーズン初勝利が背中を押してくれる。(カリフォルニア州ロサンゼルス/桂川洋一)