アスリートの使命と故郷・熊本への思い 上田桃子が有言実行の自己最高位
◇メジャー第1戦◇AIG女子オープン(全英女子オープン) 最終日(23日)◇ロイヤルトゥルーンGC(スコットランド)◇6649yd(パー71)
コースに向け続けた緊張感から解放された。上田桃子は自らのプレーを詳細に思い出すのに時間を要した。「バーディ(の内容)が…もう全然覚えていなくて。さっきの(テレビの)インタビューでも何にも出てこなかったんです」。男子メジャー大会を9度開催した難関リンクスにそれほど全神経を集中させていた。「正直、すっごい疲れましたね」。目標に掲げたメジャーでのキャリアハイの達成に充実感を交えて笑った。
19位から4バーディ、ボギーなしの「67」で通算1オーバーの6位。風が穏やかになり、5mを沈めた2番から3連続バーディを奪うと、ハイライトはグリーンの小ささからポステージスタンプ(郵便切手)と表現される名物8番(パー3)。ガードバンカーを恐れずPWで1.5mに絡めて伸ばした。
日本にはない深いポットバンカーが96個ある。「ティショットをただ真っすぐ、フェアウェイに置くだけではない。ドライバーの縦の距離感が必要」。求められたのは障害物を避けながら攻める技術、強風が吹き荒れた硬いグリーンに転がして止める逆算力、そして経験値。
「(日本で)緊張した瞬間にスイングバランスを崩すことが多かった。(このコースは)ちょっとでも気の緩みが出たらスイングに緩みが出る」。キャディを務める辻村明志コーチからは「今後につながるショットをしてこい。インコース(後半9ホール)は今後の自分のゴルフを決めると思う」と発破をかけられ、全身全霊で72ホールを回った。
28度目のメジャー出場で、初出場した2008年大会の7位を上回る自己最高順位を記録した裏には、34歳にして飽くなき向上心がある。6年間主戦場にした米ツアーで積んだ経験がある。今年はコロナ禍で1日5時間のパット練習を行い、好感触を得ていたという。「このパットなら(メジャーで)戦えるかもしれないと思えた。もう経験しに行くのではなく、行くからには良いところで戦いたい。現役でやる以上一番上を目指すのはアスリートとしての使命。そこに向かうのが楽しみでもある」と口にした。
そして、豪雨被害が出た故郷・熊本への思い。リスクを背負った渡英には、家族から反対もされた。「伝わっているといいですね。きのうインスタグラムで『私、熊本なんです』って方から『頑張ってださい』って言ってもらった。自分が頑張って熊本人頑張るぞっていうのを届けたいと思ったら、逆に頑張れって言われて、すごくありがたいです」。自己最高という勲章を握りしめた。