<日本版“メイハン”? 小林正則の選択は>
米ツアーの2日目に、単独首位に立っていたハンター・メイハンが、夫人の出産のために棄権をしたカナディアンオープンの優勝賞金は日本円にして約1億円。
そこまでスケールの大きな話ではないけれど、日本ツアーでもそんな男気を見せた選手がいた。
2週前のマイナビABCチャンピオンシップで3日目に、やはり妻の出産に立ち会うために、棄権を申し出たのは小林正則。昨年の日本オープンの覇者である。今季は9月の「アジアパシフィックオープン ダイヤモンドカップ」で初の予選通過を果たしてから、まだ4試合目の決勝ラウンド進出で、しかも通算4アンダーの17位タイと、まずまずの順位につけながら、それでも小林に迷いはなかった。
出産予定日は今月の19日だったが、かねてより医師から「いつ破水するかもわからない」と言われており、また母子ともに危険な状態に陥る可能性もあると言われていたため、もうだいぶ前から小林も心配でしょうがなかったようだ。
連絡を受けた際にも「土曜日(11月1日)中に、生まなければ危ない」と言われて、とりもなおさず駆けつけた。
結局、麻理子夫人は翌週の3日・月曜日に無事、元気な男の子を出産。思えば今季の不振も、夫人の出産が、小林をゴルフになかなか集中させなかったためかもしれない。「正直、心配で、ずっと気が気ではない」と打ち明けたのは、ちょうどその週の水曜日だったが、待望の第一子の誕生に、これでようやく小林の今シーズンが始まりそうである。
長く家を空ける職業柄、いざというとき家族と、ゴルフとどちらを選ぶか。選手たちには本当に悩ましい選択だと思う。
先日やはり第一子が誕生した藤本佳則も、その前週は連覇のかかった「TOSHIN GOLF TOURNAMENT IN Central」でV争いを繰り広げながら、小林と同様に「もし生まれるなら、絶対に帰る」と言い続けていた。一方で、藤田寛之のように「家族よりゴルフ」とストイックに宣言する選手もいる。どちらが良い、悪いではなくて、大切なのは、自分はどうしたいのか。最優先事項は何か。あらかじめ心に決めておくことだろう。そんな究極の選択にもまた、プロたちのそれぞれの価値観や、生き様が如実に映し出されているようで、興味深い。