<ショットメーカー湯原信光の意外な勲章「世界遺産検定ブロンズメダル」>
シニア入りして、今年ですでに7年目を迎える湯原信光だが、かつて“ゴルフ界の若大将”と呼ばれた爽やかな風貌は今も変わらない。若手プロたちと一緒に過ごしたというタイ合宿で日焼けした顔からこぼれる白い歯を見ると、シニア7年目の選手とはとても思えないほどだ。
湯原と言えば必ずついて来るのがショットメーカーの称号だ。屈指のアイアンショットの名手で、レギュラーツアー時代には、パーオン率№1に3度(98年、00年、01年)輝いている。その正確性の秘訣は「感性」だと湯原は言う。
「僕は、よく理論派と言われますけど、打つときは理論なんか考えていません。ライだとか風だとか、そういう自然条件に体が反応しているだけなんです。タイ合宿で、若手に教えるときも、バーンと打てとか、ブンと振れとか、感覚的な表現で教えていましたね。もちろん、『それは理論的にどういうことですか?』と聞かれれば、ちゃんと話せますけどね」。
昨年、レギュラーツアーにはスポンサー推薦で3試合しか出場していないが、ダイヤモンドカップで17位タイと大健闘も見せていた。これもキレのあるアイアンショットの賜物だ。「今年も、まだ分かりませんが、推薦が頂ければ、可能な限りレギュラーに出たいですね。今年はシニアの試合数が増えているので、日程が重ならないことを願うばかりです」と湯原。
そんな湯原に意外な“勲章”がある。世界遺産検定の「シルバーメダル」だ。「家内が世界遺産が大好きで、そういう番組とかDVDをしょっちゅう見ていて、僕もそういうのは嫌いじゃないから、一緒に見ていたんですけど、あるとき家内が、世界遺産検定というのができたから、一緒に受けましょうって言い出したんです」。
世界遺産検定は、NPO法人の主催で06年から始まったが、上級合格種は旅行業界への就職などに有利だということもあり、なかなかの難関だそうだ。その第1回を受けるため、奥様が講習会に参加して、分厚いテキスト3冊をもらってきた。最初は「オレはいいよ」と受験を固辞していた湯原だが、出題は4択だと聞き「0点はないだろうな」と受けることにし、テキストをまるで一夜漬けのように読んだそうだ。が、検定会場に行ってビックリ。「早稲田大学の広い教室が受験生で一杯なんです。こんなに受けるの!と驚きました」と圧倒されそうになったとか。しかも、受験生の多くが、旅行業者とおぼしきプロたちだ。
ただ、「テストのコツは知っている」と言う湯原。「4択問題の場合、2つは絶対にあり得ない答えなんです。残り2つのうちどちらかが正解。となると正解率は2分の1なんです。勘を働かせて選べば50パーセントは正解できるんですね」。
85パーセント正解でシルバーメダル。60パーセント以上でブロンズメダルというのが当時の世界遺産検定だが、「こういうのは、落ちるのは悔しいですけど、50パーセントじゃしょうがないか」と湯原は諦めていた。ところが奥様から「受かったわよ」との連絡が。「良かったね」と奥様を祝福したのだが、「あなたも一緒よ」と言われて、驚いたそうだ。ヤマカン的中率が高かったのだろう。「あんなマニアックなテストによく受かったなあ」というのが率直な感想だったと言う。さすが、感覚派の面目躍如と言ったところだ。
ちなみに、当時この検定を受けたのは3352人で、シルバー合格者は118人。ブロンズ合格者は1414人だった。試合会場近くに世界遺産があれば必ず奥様と一緒に足を運ぶと言う湯原。「せっかく近くに来ているのに、試合だけじゃもったいないですよ」。これぞ、プロゴルファー版“フルムーン”。元祖・若大将は、ツアー生活も悠々自適に楽しむ。