国内男子ツアー

5打差の逆転で念願の日本一の座に<片山晋呉> 日本オープンゴルフ選手権競技

2005/10/17 12:00
財団法人 日本ゴルフ協会の安西孝之会長から受け取ったオープン杯。 錚々たる歴代チャンピオンと並び、ここに片山の名前も刻まれる。

大会週の11日火曜日。コース前の信号を右折して、廣野ゴルフ倶楽部の正門をくぐった瞬間、「身震いがした」。厳粛な空気に、足を踏み入れるのも畏れ多いと思ってしまう。

その感覚は、初めてオーガスタに訪れたときと似ていた。ジャケットを着込み、背筋を正してハウスに入った。落ち着いたトーンの家具で統一されたレストランでは、ジャケットを着たまま食事をした。日大2年時の92年、やはり廣野で行われた日本アマ。あのときには分からなかったコースのよさが、今なら分かる。

マスターズ、全英オープン、全米オープン、全米プロ。世界メジャーを何度も経験して訪れる廣野は、「たとえば、ここで全米オープンをやってもいいくらいの難しさ。何より、勇気を試されているコース。選手の技量を引き出す最高のセッティングは、世界のトッププレーヤーたちも絶賛するはずだと」。

上:ボランティアの方々と記念撮影 下:「プロなら、誰でも夢見ること。それを、自分が実現したんだなって・・・」 涙で目を真っ赤に腫らしたまま、カップにそっと口付けた。

ここでプレーができるだけでも幸せだと、そんな思いで心を一杯にしながら4日間を戦った。同時に、「ここで勝ちたい」。日ごとにその思いを強くした。だからこそその瞬間、こみ上げてくるものを堪えることができなかった。

この日最終日は、最終組の4つ前からスタートし、5打差の大逆転でつかんだツアー通算17勝目は、1年と3ヶ月ぶり。 待ちに待った今季初優勝は、念願だった日本一のタイトル。

すべての競技が終わり、いったん引き上げた18番グリーンに、今度はチャンピオンとしてもういちど立った。 クラブハウスと18番をつなぐアーチ型の眼鏡橋は、唇をギュっと噛み締めながら渡った。

聞こえてきた大ギャラリーの歓声に、改めて沸き起こるこの思い。「廣野で勝てたこと。それが何よりも嬉しくて。廣野の神様が僕に味方して、良い方向へ導いてくれたとしか思えない」。