ツアープレーヤーたちの行きつけ<池田勇太>
旅から旅の連続のプロゴルファーたちにとって、ちょっとした悩みなのが散髪だ。連戦が続けば、髪の毛を切りに行く暇もなかなかない。唯一、休みが取れそうな月曜日もその日はお休みという理髪店も多く、「どこでも構わない」という無頓着さんならばいいが「このお店でないと」というこだわり屋には、少々やっかいだ。
伸び放題の頭髪も、次のお休みまでじっと我慢の子で、試合の合間を利用して行きつけに駆け込む。だから、1週間のオープンウィークを挟んで、先週の「ANAオープン」はがらっと“イメチェン”していた選手が多かった。
若手筆頭株の上井邦浩もそのひとりだった。もともと、長めのヘアスタイルを好んでしていたが、前回の散髪は7月と約1ヶ月半も前のこと。9月も半ばになると、さすがにうっとうしくなってきた。上位争いをした「フジサンケイクラシック」では、テレビ中継に映った自分の姿を見て、「ちょっとボウボウすぎるかな、と」。てっぺんの髪はサンバイザーに収まりきれず、襟足は昔のジャンボ尾崎並みの長さに到達した。「どうしてもここでなくちゃ」というほどにこだわってはいないそうだが、所属コースの愛知県・三好カントリー倶楽部の近くのお店は、常連のよしみで格安にカットして下さることもあり、「やっぱり地元で切ろう」と我慢してきた。
9月以降はまた連戦が続くこともあり、今回はばっさりと「10センチカット」で気分一新。次の会場ではみんなから「若返った」といたく評判で、すっかりご機嫌だった。「しかも、本当は1000円のところを今回はタダにしていただいて。本当にお得でしたよ」と、得意げにそう語っていたら、かたわらの藤田寛之がすかさず突っ込んだ。「お前、稼いでいるのにせこいなあ…。1000円くらい払えよ」。「いや、今回はいいよと言っていただいたので…。お断りするのもあれなんで」と、必死で言い訳する羽目になってしまった。
では、かく言う藤田はどうしているかと言えば、連戦に備えて各地に行きつけを持っているという。地元・福岡と兵庫県と、北海道と3カ所に担当の美容師さんを置いて、伸びてきたらすぐに行けるようにしている周到さだ。藤田のほかに、ツアーのファッションリーダー矢野東も担当の美容師さんがいて、彼の場合は「もし試合でお店に来られないときは、出張してあげるよ」というほどの手厚いケアぶり。
ちなみに、昭和の香りがほんのりと漂う角刈りがトレードマークの23歳、池田勇太も「ANAオープン」でさっぱりと刈り込んできた一人だった。シンプルなヘアスタイルに、ひょっとして自宅でバリカン派…!? と思いきや、地元・千葉県の理髪店で丁寧にハサミを入れてもらっているという。だが、そんなことを尋ねること自体が本人には愚問だったようで、「なんだよ、俺がハサミで切ってたらわりぃ~のかよ」と、半切れ気味に毒づかれてしまった、トホホ…。池田選手、変なことを聞いてスミマセン……。