ツアープレーヤーたちの素顔<池田勇太>
ジャンボ尾崎に心酔する23歳、池田勇太。祖父・直芳さんの手ほどきで、ゴルフを始めた6歳のころだった。「テレビをつけたら、毎週勝ってるんだから。あれがプロ。俺もああなりたい」。圧倒的な強さで敵を次々となぎたおすその姿に強烈に惹かれた。今や石川遼を筆頭に、流行のスリムパンツには見向きもせず、風に音をたてていっそう膨らむダボダボの3タックパンツも、当時のファッションを継承しているからこそ。デビューしてすぐのころ、「俺にとってゴルフはこのイメージしかない。このスタイルは絶対に変えない。この格好を貫き通して世界に出ていくんだ」と、宣言したものだ。
それほどまでに傾倒しているのだから、プロ2年目にしてシード入りを果たした今季はこの機会にさぞや“かの人”とお近づきに…と、思うのは凡人の考えなのだろうか。「ジャンボさんに自分がファンだと伝えたかって?そんなことしねえよ。するわけねえ」と、一笑に付したのだ。「そりゃ挨拶くらいはするよ。でもだからってゴルフを教えて欲しいとか、そんなことをお願いするつもりはない」と、池田は首を振る。「ジャンボ軍団に入りたいとも思わない」とも。なぜなら「俺にとって、ジャンボさんはあくまでも憧れだから。それを軍団入りとか、一線を越えちゃったら、ただの先輩と後輩みたいになってしまう。それじゃ憧れじゃなくなっちゃう。そういう馴れ合いみたいのは、俺は嫌なんだ」と、池田は言うのだ。
あえて一定の距離を保とうとする姿勢は、まるで初恋にも似て、「憧れは憧れのままで置いておきたい」という心理の表れだ。自らの性格を「わがままだと思う。意地っ張りで強情でせっかちで…。あとは態度がでかいとか?」と、ニヤリと笑って自己分析するやんちゃ坊主にも、そんなロマンチストな一面分がある。
破天荒な振る舞い中にも、人情味溢れる素顔がのぞく。「サインしないプロはアホ」とのたまい、ホールアウトすれば何はさておき真っ先に、ファンの元へ駆けつける。最終日に首位でスタートしながら16位に崩れた「UBS日本ゴルフツアー選手権 宍戸ヒルズ」は、自分の代わりに悔し泣きをしてくれたファンの姿に胸を痛め、「もうみんなに悲しい顔はさせたくない。次は絶対に勝つ」と心に誓うや、翌週の「日本プロゴルフ選手権」で、きっちりと男気を示してみせた。
ツアー初Vで、「全英オープン」の出場権もほとんど不動のものとした。優勝会見で「将来の目標はメジャー優勝?」と尋ねられ、「だからジャンボさんだって!」と即座に切り返した池田。通算113勝の後継者候補はこの1勝に弾みをつけて、「これからは、3桁優勝狙います!」と、公言した…!!