2018年 ダンロップ・スリクソン福島オープン

秋吉翔太が変えなかった“自分スタイル”

2018/06/27 08:00
1週間で39打縮める離れ業をやってのけた秋吉翔太

「ダンロップ・スリクソン福島オープン」は、前週「全米オープン」で予選落ち(通算19オーバー)を喫した秋吉翔太選手が、通算20アンダーの好スコアをたたき出し、ツアー2勝目を飾りました。

私も海外の試合を経験した身として、この優勝には、単に一週間で“39打縮めた”結果だけでは計り知れないすごみを感じました。どのような選手であろうと、試合で打ちのめされた後は、自分のゴルフを見失い、ある程度の時間を要さないと元の状態には戻れないからです。

出場権をつかんで意気揚々と乗り込んだ舞台。思うようにできなかった自分にいら立ち、憤りを感じ、積み上げてきた自信を失い、積み重ねた技術に疑心暗鬼になる。私も似たような経験を何度も重ねて、そのつど前を向いて進もうと思うまで、国内に戻ってから立て直しには数試合が掛かりました。

特にメジャーのコースセッティングで戦った後、自分のプレースタイルを変えないといけないのでは?と考えてしまう選手は多いものです。「マスターズ」に出場したフェードヒッターが、オーガスタナショナルGCに有利とされるドローに持ち球を切り替えようか悩んだり、「全英オープン」に出場した選手がリンクスに対応できる低くて強い球を習得しようか悩む。コースセッティングがシビアすぎる全米オープンに影響されると、必要以上にセーフティなマネジメントを心がけようとしてしまうものなのです。

ことしの全米オープンの舞台シネコック・ヒルズGCは、フェアウェイこそ狭くありませんでしたが、一度入ってしまうとなかなか抜け出せない長いラフと、外せば転げ落ちてしまう砲台グリーン、厳しいピンポジションが多くの選手を苦しめました。全ホールでシビアなマネジメントを強いられた選手たちは、予選だけでも疲労困ぱいだったと思われます。体力だけでなく、頭の中も疲れ果て、フェアウェイに乗せることだけを繊細に考えてしまう思考モードへと陥ってしまうものなのです。

国内ではタフなコースといえども、海外メジャーのシビアさと比べたら、アバウトに攻めてもまだ許容範囲は広いと言えます。一打も油断できないという思考モードから抜けださない限り、普段通りの力を国内で発揮することは難しくなります。この状況を考えると、秋吉選手が出した20アンダーは、まさに離れ業。体力的にもメンタル的にも、帰国後すぐに結果を残すのがどれだけすごいことか。そこに彼の持つ強さがあるように思います。

秋吉選手は、もともとあまり細かい部分に躊躇せず、テンポよくショットを打ちます。最終日も飛距離の出る選手がレイアップをする状況で、1Wで大胆に攻めるシーンを何度も見ました。並みの選手なら全米の経験で委縮してしまうところを、アバウトにパワーで攻めていく姿は、ツアー初勝利を飾った「ミズノオープン」の時と何も変わらない姿でした。

すでに全英オープンの出場資格を取得。今後は「全米プロ」の出場資格も視野に入ってくると思われますが、彼が“自分のスタイル”を変えずにメンタルだけをうまく切り替え、挑戦を続ければ、海外でも必ず結果を残せる選手に成長していくと信じています。(解説・佐藤信人

2018年 ダンロップ・スリクソン福島オープン