ボランティアの少女が地元大会の主役に 比嘉真美子がかなえた大願
◇国内女子◇ダイキンオーキッドレディス 最終日(10日)◇琉球GC(沖縄県)◇6514yd(パー72)
「夢が現実になって本当にうれしいです」。30センチのウィニングパットを沈めた比嘉真美子は脱力したように立ちすくみ、少し遅れて右こぶしを握った。「現実なのか、夢なのか。そんな感情が入り混じっていた」。最終日は「76」をたたきながらも初めて地元大会を制し、沖縄県勢では2004年の宮里藍さんに続く2人目の優勝者として名を刻んだ。
プロの世界に入ってから「とにかく勝ちたかった大会」と、ずっと心に思い描いてきた。きっかけは、ゴルフを始めて間もない小学生5年生のときに初めて参加した大会ボランティア。練習場でボールを手渡していた少女の目に、間近で見る女子プロたちはキラキラとまぶしく映った。「私もこんなカッコいい女子プロになりたい。そう思わせてくれたのは、ダイキンがきっかけだったんです」
そんな強い感情も、独走していたトーナメントリーダーの動きを鈍らせたのか。2位に7打差をつけてスタートしながら、「思った以上に緊張して体がうまく動かなかった」とリードはみるみる縮んでいった。8番と13番のパー3ではグリーンを外し、アプローチミスも重なってともにダブルボギーとした。16番(パー3)では1m強のパーパットを外し、一時は2打差まで詰められた。母・彰子さんも「大丈夫かなって、ヒヤヒヤでした」と肝を冷やしたという。
強い風雨の中、「ショットからパットまで完璧だった」という17番でようやく流れを断ち切った。1Wでフェアウェイに運び、98ydから56度のウェッジでピン左手前2mにつけた。これを沈めてリードを3打に戻し、右こぶしに思いを込めるようにゆっくりとガッツポーズを作った。
苦しい戦いを乗り越えた直後、その目にはうっすらと涙が浮かんでいた。「努力をして頑張り続けていればいいことがあるんだなと、改めて感じた瞬間だった」。今年は、これまで師事してきた辻村明志コーチのもとを離れてツアーを戦うことを決めた。「自分の力を高めるのが強くなる近道だし、気持ちの成長にもつながると思う。今年は自分自身と、とことん見つめ合ってゴルフができたらいい」。その中でつかんだ待望の地元優勝は、25歳にとって再び大きな財産になるはずだ。(沖縄県南城市/塚田達也)