イ・ボミが樋口久子の冠大会出場を決意したワケ
◇国内女子◇樋口久子 三菱電機レディスゴルフトーナメント 事前(26日)◇武蔵丘GC(埼玉)◇6580yd(パー72)
賞金ランキングトップのキム・ハヌル(韓国)をはじめ、多くの選手が休養に充てた今週、イ・ボミ(韓国)も当初は今大会の欠場を予定していた。シーズンの残り5試合のうち、この「樋口久子 三菱電機レディスゴルフトーナメント」は、もっとも賞金額が低い(総額8000万円)。しかしイは、次週の日本ツアー特別公認の米ツアー「TOTOジャパンクラシック」を欠場してまで、「樋口久子さんに恩返しがしたい」と今週の出場を決めた。
イは出場試合の日程を、清水重憲キャディをはじめとしたサポートスタッフと相談して決める。シーズン中盤まで他の上位選手と同様、今週をスキップする予定だったが、8月の「CATレディース」で気持ちが変わった。シーズン序盤からスイングの不振に陥ったイは同大会で樋口久子の「シンプル・イズ・ベスト」という助言を支えに優勝。日本のレジェンドの名前を冠にする大会を『出場』に切り替えた。
その結果、今大会はハードな5週連続の出場試合となり、次週の「TOTO」を欠場する。世界トップクラスの選手と争う次週は出場人数も絞られ、誰もが出場できるわけではない(※)。今週会場に入ると、多くの選手や関係者から「なんでTOTOに出ないの!?」と驚かれた。ただ現在、イの賞金ランクは20位で、3年連続の賞金女王戴冠は絶望的。賞金額を踏まえて試合を選ぶだけの状況ではない。チーム関係者によると「終盤の日程を考え直す際に、『この試合には絶対に出る』と言った」という。イは「樋口さんはたくさんお世話になった人だし、色々教えてもらった」と礼儀を重んじて決断した。
キム・ハヌル、申ジエらの通訳、現在はイ・ミニョン(すべて韓国)を担当する日本在住十数年の韓国人マネージャーは「どんな成績でも、日本に参戦する韓国選手にとってボミはやっぱり特別」と言う。「今年はハヌルやミニョンの成績が良いけど、2人にとってもボミはすごい存在。ボミは所属先が日本の企業(延田グループ)。3度賞金女王になったアン・ソンジュもそう(モスバーガー)。これは日本人が思っているより、韓国の選手にとって、大きくてスゴイこと。海外の企業がスポンサードしてくれるなんて。運もあるかもしれないけど、礼儀があり、日本人に好かれる人間性があるからこそ」と続けた。
残りシーズンでのイの出場試合は4戦。優勝を逃した時点で3年連続女王の夢は潰える。自身の現状を踏まえ「(今週の目標は)トップ10でも高いかもしれない」と不安はぬぐえない。ただ、「樋口さんの大会。教えてもらった『シンプル・イズ・ベスト』だけを考えてやります」と胸に誓った。(埼玉県飯能市/林洋平)
(※)出場資格は10月「富士通レディース」終了時点の賞金ランク35位以内(欠場者が出ると繰り上げ)