見えてきた30勝!全美貞「奇跡の1打」でV手繰り寄せる
◇国内女子◇ヨコハマタイヤPRGRレディス 最終日(12日)◇土佐CC(高知)◇6228yd(パー72)
7位からスタートした全美貞(韓国)が、ともに通算7アンダーの首位タイで終えた藤崎莉歩をプレーオフで破り、今季初優勝を挙げた。2013年に続く大会2勝目、ツアー通算25勝目で、史上4人目となる生涯獲得賞金額10億円を突破した。「こんなに早く達成できるとは思っていなかった」と、予想外の記録達成に驚いたのは全自身だった。
首位で迎えた54ホール目の18番。「緊張していて、振り抜こうとしたけど、体の回転が止まってしまった」と、ティショットを大きく左に曲げてOBを覚悟した。しかし、その球は全も「奇跡」と認める“幸運”の1打。木に当たってフェアウェイに着弾した。第2打はグリーン奥に運んだものの、アプローチをピンそば1.5mにつけてパーセーブし、首位を堅守して後続のホールアウトを待った。
18番ホールで行われたプレーオフ1ホール目。藤崎がティショットを左サイドのバンカーに入れた一方で、全は確実にフェアウェイに運んだ。第2打はグリーン左上で、バーディパットは1m以上も膨らませる約7mのスライスライン。「上からだったので、球が止まらなさそうだったし、寄せにいったのが入ってくれた」と、ボールは弧を描きながらカップに向かってウィニングパットとなった。
今年のオフにはコーチを務める義兄のキム・ジョンチョルさんと、カリフォルニア州で約40日間に渡ってスイング修正を行った。プロ転向から12年の中でも「自分にとっては大きなことだった」と、試合で通用する完成形に近づくまでは「長い時間を要する」と不安もあったが、「今週の結果は自信になった」と払しょくした。
見えてきた30勝――。「近づけば近づくほど緊張する。あまり欲張らないように、私なりに頑張りたい」。昨年7月の「サマンサタバサレディス」で3季ぶりの優勝で復活を遂げてから、約8カ月…。ケガやスランプ、そしてスイング修正と、さまざまな試練と変化をしながらツアーに臨んでいる。ツアー初優勝の2006年からコツコツと積み上げてきた34歳が、永久シード獲得までカウントダウンを奏で始めた。(高知県香南市/糸井順子)