けがの功名!?一ノ瀬優希 一流選手からもらった“強い気持ち”
ツアー通算4勝目に向け、一ノ瀬優希が今年3月の「Tポイントレディス」で繰り広げた優勝争いに続く、今季2度目の最終日最終組のチケットを得た。国内女子ツアー「フジサンケイレディスクラシック」2日目、7位から出た一ノ瀬は5バーディノーボギーの「67」で回り、通算7アンダーの単独首位に浮上した。
スタート時点で首位とは3打差。「きょう伸ばさないと優勝争いに加われない」という強い気持ちで臨み、2番でこの日1つ目のバーディを奪うと、4番では4mにつけ、5番ではイーグル逃しの2連続でリーダーボードを駆け上がった。折り返し直後の10番では、10mの長い距離を沈めて4つ目。最終18番では残り148ydの第2打を3mに寄せ、有終のバーディで締めくくった。
「試合に飢えていた。とにかく試合に出たかった」。昨年7月から公傷により欠場し、ケガ(左胸郭出口症候群)の完治に努めるため戦列を離れた。当初は「なんで自分だけ?どうして治らないの?」と自問自答しては、気分が落ち込む日々。女子ゴルフをテレビで観戦できるようになったのは「精神的に落ちついてきた」9月ごろからだったいう。
落ち着きを取り戻すキッカケとなったのは、東京都北区にある国立スポーツ科学センター(JISS)でリハビリを開始したことだった。JISSは、トップレベルにあるスポーツ選手の心身の状態を診断して、競技力向上をサポートする施設だ。実家のある熊本を離れ、集中して治療に専念しようとした先で出会ったトップアスリートたちの存在が、一ノ瀬の心を動かした。
特にソチ五輪のフリースタイルスキー女子モーグル日本代表の伊藤みき選手や、自転車競技の豊岡英子選手とは気が合い、何度も3人で話し込んだ。
「みんな、ボルトを身体に埋め込むようなひどいケガなのに・・・。自分の種目に対しての気持ちが強くて、フワッとした目標ではなくて、明確な目標を持っていた。前しか向いていないんです」。同じアスリートからの生の声に耳を傾け、奮起。“負”の精神状態を振り切り、「自分の状態を知ること、身体と向き合うこと」を徐々に受け入れて、前向きになっていった。
「試合で成績が悪いことよりも、ケガをして試合に出場できない方が辛い」と、今も身体への負担を少なくするためのスイング改造を続けている。その効果もあって、今週は痛みもなくクラブを振り抜けているようだ。「順調に(調子も状態も)上がってきている最中に、優勝争いができてうれしい。明日は周りを気にせず、自分のペースで回れればいい」。逆境で得た強い気持ちを武器に最終日に臨む。(静岡県伊東市/糸井順子)