暗転…宮里藍“一瞬”のスコアボードが命取りに
宮城県の利府GCで開催された「ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープン」の最終日。3打差を追ってスタートした宮里藍は、前半からバーディを量産して首位に浮上。一時はリードを4打差に開いたが、終盤に崩れてイ・ナリ(韓国)に逆転を許し、1打及ばない通算4アンダー、2位タイで惜敗した。
高校時代を過ごした“第2の故郷”で、1万人を越えるギャラリーの大歓声を独り占めにした宮里の最終日。前日に乱れたパットは、昨夜、父の優さんから受けたアドバイスで冴えを取り戻し、宮里がホールを1つ進めるごとに、ファンの期待と興奮がコース全体を分厚く覆っていく。
「集中力も良くて、いいペースで回れていた」。2番(パー5)でバーディを先行させると、4番では5メートルのチャンスを決めてガッツポーズ。8番(パー5)、9番と連続バーディを決めて通算4アンダーに伸ばし、早々に首位を捕らえてバックナインを迎えた。
「特に9番以降は、スコアボードを見ないようにした」。自分だけの世界に入った宮里の集中力は、ますます研ぎ澄まされていった。10番で7メートル、13番ではチップイン、さらに14番で3メートルを決めて7個目のバーディ。この時点で2位のイ・ナリに4打差をつけ、もはや勝利は盤石なものに思えた・・・矢先だった。
15番(パー3)のティショットを右カラーに外し、バーディトライは約8メートル。そこでグリーンのラインを読むと、その先にあるスコアボードが無意識に目に入り、自分が「4打差のリード」であることを知った。いや、知ってしまった。
「そこまでの100%以上のゴルフに満足してしまい、一瞬、気が緩んでしまった。“行けるところまで行くんだ”、という気持ちがスッと消えてしまった」。
直後にパターで打った2打目は、カップを2メートルショート。「それまでの緊張感やフィーリングと違う感じだった。これはまずいな、と思った」。さらにパーパットを1.5メートルオーバーさせると、返しも外し、2オン3パットのダブルボギー。さらに17番でも3パットボギーを叩く自滅により、イ・ナリに逆転を許した。「こんな経験は初めて」という、わずかな隙が招いたフィーリングの変化。「これがゴルフの怖いところ。一度、緩んだものを直すことは難しいと勉強になりました」。
勝利こそ逃したが、「今日の精神的なことを含めて、収穫が多い3日間だった」と、いつもの前向きな姿勢は崩さない。惜敗を引きずらず、次戦の国内メジャー「日本女子オープン」へと戦いの場を移す。(宮城県利府町/塚田達也)