成田美寿々、真夏の大逆転Vを呼んだハートの熱さ
プレーオフ2ホール目、長いバーディパットを外したリ・エスドに対し、成田美寿々は、ピン上6メートルにつけていた。「下りの速いスライスライン。とりあえず、距離を合わせてパーを獲ろうと思った」というバーディパットは、2カップ分のスライスラインを描いてカップ左から転がり落ちた。「NEC軽井沢72ゴルフトーナメント」最終日、スタート時の6打差を逆転して優勝を決めた成田は、男子顔負けの力強いガッツポーズと爽やかな笑顔で自身の通算2勝目を祝福した。
「正直、追いつくと思っていなかった」という。「10アンダーくらい出さなきゃダメだろうと思っていて。昨日65だったので、とりあえず今日も65を目指していました」と、当初の目標達成にまい進したら、エスドの足踏みにも助けられ、気付いた時には逆転Vだった。
今大会の練習日、成田は仲の良い山村彩恵、東浩子とアプローチ練習場でチップイン競争をやっていた。それを見守っていた父・俊弘さんは振り返る。「熱くなる性格なんでね。アイスクリームかなんかを賭けてずっとやっていましたね。それで、だいぶ変わりましたよ」。
7バーディを奪った最終日にも、練習は嘘をつかなかった。スコアカードに表れない好プレーは6番ホール。2打目をグリーン奧のラフにこぼした成田の球は、前方上部は木の枝が掛かって球を上げられず、砲台グリーンのエッジまでは深いラフが密集していた。ラフ、そしてグリーンエッジとクッションを2度使う絶妙の一打で、ピンそば1メートルにぴたりと寄せてパーセーブ。「あれは、絶対寄らないと思いました」と、キャディの佐藤大輔氏も舌を巻いた。
以前は仲間内で“ナリタッチ”と揶揄されていた強気のパッティングも、今年2月に米国サンディエゴでデーブ・ストックトンに「転がっていくイメージを持ちなさい」との教えを受けて開眼。「1勝目の時よりも、メンタルも技術も体力も向上していると思うけど、これっていうのはパッティング」と、自信を深めた。
初優勝時、父に“まぐれ”だと言われたという成田。「悔しかったです。“もう一勝したら本物だよ”と言われたので、早くしたかった」との思いを遂げ、にっこりと微笑んだ。目標とするのは「リオ五輪で金メダル」。3年後の夏、地球の裏側でこの日と同じガッツポーズが見られるだろうか。(長野県北佐久郡/今岡涼太)