「ふつふつと湧き上がるものがあるから」 アン・シネがカムバックした理由
◇国内女子◇QTファイナルステージ 2日目(29日)◇葛城GC宇刈コース(静岡)◇6421yd(パー72)
正午時点の風速は前日が7.4m、この日も7.5m。時に10mを超えた。「昨日、風がすごく強かったので、今日はよりしっかり計算してプレーしました」。3アンダー4位からスタートしたアン・シネ(韓国)は3バーディ、1ボギーの「70」で通算5アンダーに伸ばしたことを喜んだ。
今年10月「マスターズGCレディース」を最後に、イ・ボミ(韓国)が35歳で日本ツアーから引退した。通算21勝を挙げた元賞金女王には完全燃焼のフィナーレだった。
12月18日に33歳になるアンは来季、5年ぶりの国内ツアー復帰を目指す。同じ韓国人女子プロだが、日本ではツアー未勝利、シード獲得の経験もない。比較するには無理があるかもしれないが、年齢は近く、異国で戦う立場は同じ。しかも、アンは2019年を最後に4年のブランクがある。なのにカムバックした。
「私は自分でやめたい(ツアー活動を中断したい)と思ったわけじゃなく、断念せざるを得なかった。奮い立たせるもの、ふつふつと湧き上がる勇気、気持ちがあるんです。仮にやめるにしても、そのタイミングは自分で決めたいです」。2017年から日本ツアーに挑み、19年の最終QTで25位になり、翌年の前半戦出場権を得た。「これから」。そう思った直後のコロナ禍だった。
「旅行ができるので、いっぱいしました」。スイス、イタリア、フランスなど欧州へ。米国には7度行き、カリフォルニアでは「こんな場所に住みたい」とも思った。その一方で、ゴルフへの情熱はマグマのように溜まっていったのかもしれない。
カムバックに向け、ここ数カ月は食事とトレーニングの計画を綿密に立て、体を引き締め直したという。来日前には韓国で約2年ぶりのレギュラーツアー競技に出て、先週21日からのファーストQTに挑んだ。「ドライバーショットは4年前の90%しか飛んでいません。でも、4年前よりメンタルは進歩したと思う。この2日間も心穏やかにプレーできています」
15位で通過したファーストQT前に約1週間、葛城GCで練習ラウンドを重ね、マネジメントを整理し、風も経験済み。「残り2日、結果はオーバーパーでもアンダーパーでも、一打一打をしっかりプレーしたい」。首位に2打差の4位でターン。来季ツアー前半戦の出場圏内となる35位前後クリアにひた走る。(静岡県袋井市/加藤裕一)