小祝さくら「1試合、休みます」 オープンウィークの効果実感で女王争いの秋へ
◇国内女子◇NEC軽井沢72ゴルフトーナメント 最終日(15日)◇軽井沢72G北コース (長野)◇6679yd(パー72)
3打差で残り9ホール。リーダーには普段のサンデーバックナインとは違う、独特の緊張感があった。それまでに調子を把握することもできない。「ハーフだけだけど3打差。自分が落としたらすぐに(差が)埋まる」。連日の悪天候で2日目が中止、最終日は9ホールだけを回る競技成立ギリギリの計27ホールの短期決戦。小祝さくらはイレギュラーの戦いを冷静に処理した。
開始3ホールでパーが並び、穴井詩に一時は1打差に迫られたが、13番(パー5)で左ラフからの3打目を9Iでピンそば30㎝につけてバーディ。続く14番では3mのパットをカップに流し込んで2連続とした。
「あまり周りのスコアを考えず、自分の今のプレーをしよう」と雨にも風にも、ほかの選手にも流されることなく、淡々とノーボギー。最終18番で1mのウィニングパットを沈めたときも「まだあとハーフあるんじゃないか…」と妙に疑い深いまま。「ハーフだったのであっという間で。優勝したっていう感じが薄いです」と、ホールアウト後はなんだか流されるままにキャリア5勝目のセレモニーに移った。
競技短縮によりランキングへの賞金加算は、規定により当初の予定の75%(1080万円)になったが、トップを走る賞金レースで約202万円差に迫っていた2位の稲見萌寧を再び引き離した。悠然とシーズンを送っているようで、この今季4勝目は3月の「Tポイント×ENEOSゴルフ」以来5カ月ぶり。「自分の中では長く感じた。最近は調子も良くなくて『どうやって前半戦で優勝したんだろう』と自信もなくなっていた」というブランクに区切りをつけた。
試合後の会見で「ことし、1試合休むんです」と明かした。普通の選手であれば特別なことではないが、小祝の場合はニュースになる。シード選手として本格参戦した2018年の開幕戦から今大会までの113試合で欠場が一度もないからだ。「自分はまったく休む気はなかった」というなかでの決断に至ったのは、師事する辻村明志コーチの助言によるもの。10月「スタンレーレディス」をスキップする。すべては賞金女王争いが過熱するシーズン終盤戦に向けてエンジンを休めるためだ。
「東京五輪」が行われた前週は、3月のシーズン再開後、ツアーの一年で唯一のオフだった。「オープンウィークが大きかった。そこで重点的に練習できた。1週間の練習って大きいんだなと」と地元北海道で充電した時間を振り返った。コーチの先を見据えたアドバイスも、いまだからこそ深く実感できる。(長野県軽井沢町/桂川洋一)