天国に届け 池田勇太が亡き祖父に贈る通算13勝目
「ただただ、上を目指して頑張りたい」。その想いは、きっと空高く届く。福岡県の芥屋ゴルフ倶楽部で開催された「RIZAP KBCオーガスタゴルフトーナメント」最終日。池田勇太が1イーグル、8バーディ、4ボギーの「66」で回り、通算20アンダーとして後続に5打差をつけ今季初勝利を飾った。4日間首位の座を譲らない完全優勝で挙げたツアー通算13勝目は、5月に他界した祖父に贈るプレゼントになった。
1つスコアを落として迎えた5番からの3連続バーディで勢いづいた池田は、10番終了時に3打差をつけて独走態勢を築いた。
見せ場は、13番(パー5)でボギーを叩き、小田孔明に2打差に迫られた直後の14番。ティが前に設定されたパー4で、1Wを振り抜いた。ピンまでは打ち下ろしを計算して305yd。会心の一打は狭い花道を伝ってピンそば1.5mにピタリとついた。「きのうはグリーンをオーバーしたので、多少でも止まりやすい高めの球を狙った。“男子っぽく”魅せられた」という、自画自賛のイーグルで勝負を決めた。
「朝からボギーを打っても、あきらめずやったのが後半につながった」。2009年にツアー初優勝してから7年連続で挙げた勝利は、4日間にわたり強さを存分に見せつけて奪った。
今年5月4日、かねて病気療養中だった祖父・直芳さんが他界した。享年85歳。地元千葉でトップアマチュアだった「じいちゃん」にもらったクラブが、ゴルファー・池田勇太の原点だった。
プロとして、選手会長としての責務を背負いながら「おふくろが一番つらいはず」と悲しみを抑え込んで自ら葬儀を取り仕切った。周囲の人間に気遣ってばかりの毎日だが、誰もいない自宅で仏壇に話しかける時間もある。その部屋で、寝転がって天井を見上げる時間がある。「親じゃないんですけど、ゴルフでは親みたいなんです」
「(予選落ちした)全英オープンで何とかいいところを見せたかった。これで天国にいい報告ができる」
賞金ランキングは41位から9位に急浮上。「これでスタートラインを越えた感じ。2勝目、3勝目を目指せる。賞金王の夢もあきらめていない」。天国に届けたいタイトルは、まだある。(福岡県糸島市/桂川洋一)