フェードへのこだわりから脱却 藤本佳則の進化の時
岐阜県のTOSHIN Golf Club Central Courseで行われた国内男子ツアー「TOSHIN GOLF TOURNAMENT IN Central」。2日目に単独首位に立った藤本佳則がその座を守りきり、ツアー通算2勝目を飾った。19アンダーからスタートした最終ラウンドは7バーディ、2ボギーの「67」。通算24アンダーで2位の小田孔明に4打差を付け、逃げ切った。
72ホールでの最多アンダーパー記録(通算26アンダー)、最少ストローク(260)の更新はいずれもならなかった。だが小田に2度、1打差まで詰め寄られながらも最後まで動じず、最後は大量リードを持ってフィニッシュ。昨年「日本ゴルフツアー選手権 Shishido Hills」で初勝利を挙げた際に見せた涙は無い。「また泣いたら気持ち悪いでしょ。何回泣くねん、ってなる」。今度はトレードマークの笑顔満開で歓声に応えた。
ルーキーイヤーに国内メジャーを制覇。しかしその後もチャンスがありながら、自滅するケースが目立ち、2勝目がなかなか届かなかった。ここまでの道のりを「長い、だいぶ長いよ」と吐き捨てる。
「1勝して、どっかに心の余裕ができたせいかもしれない。だから優勝争いしても、優勝できないのかもしれない」。
自分を厳しく見つめ、夏場の長いオープンウィークの間に阿河徹(あが・とおる)コーチと新しいスイングづくりに取り組んだ。「ずっとフェードボールでゴルフをしていて、悪くなると左にボールが抜けて・・・。アドレスがどんどん左を向いていることもあった」。ボールが捕まり過ぎる、右手を返す動きを嫌っていたが、この修正に注力。試合の無かった6週間で、ラウンドはわずか5回ほど。ほぼ練習場での打ち込みに終始した。
するとシーズン後半戦を迎えた頃、弾道はストレート軌道を描き、時にはドローも自在に操れるようになった。この最終日、折り返しの9番(パー5)ではドライバーでのティショットを左の崖に落としかけたが「ストレートで狙っていたから、気持ち悪くなかった」と言う。こだわり続けたフェードボールで失敗し、ボールが左に抜ければ、心の平静は保てなかったかもしれない。悩みの時間を経て、ショットの幅が拡がったことで、精神的にも強くなった。
「全英オープン」、「WGCブリヂストンインビテーショナル」に出場した昨季に比べれば、やはり今季の出来には満足できない。「これから2勝、3勝とできる選手にならないと、日本を背負う選手にはなれない。僕も、そうなりたいと思っている」。1年4か月ぶりの勝利は、期待の23歳の志を思い出させた。(岐阜県加茂郡富加町/桂川洋一)