ツアープレーヤーの横顔<平塚哲二>
念願の初優勝を飾った選手にとって、やはり欠かせないことのひとつが、お世話になった方々への優勝報告でしょう。昨年12月、最終戦のゴルフ日本シリーズJTカップで劇的に勝った平塚哲二もまた然りで、数ある恩人の中でも彼がいちばん気をつかったのは、ジャンボ尾崎でした。
昨年のオフ、「何かを変えたい」と懐に飛び込んで以来、何かと目をかけてもらうようになり、そのことが平塚に大きな自信を与えてくれたといいます。
「いつまでも、何をモタモタしている?」「あの試合の、最終ホールのあのアプローチはいったい何だ?」
なかなか勝てずにいたときにも、幾度となく声をかけてもらった数々の叱咤激励。
「それが、僕に勇気をくれたんです」と平塚は振り返ります。
「数年前までの僕は、ジャンボさんに名前さえ覚えてもらうのも精一杯の、ちっぽけな存在でした。それが去年は、僕のゲームにも注目してもらい、その上『何やってんだ』と、叱ってもらえるまでになった。
ジャンボさんにしてみれば、そんなのは些細なことかもしれないけれど、僕らレベルの選手にとってはどれだけの励みになるか
・・・。『あのジャンボさんが俺のことを気にかけてくれている』。
そう感じられることで自分もほんの少し、一人前になれたような気がして、よりいっそう頑張れる気がするんですよね」
初優勝を飾った翌日、その恩人にさっそくお礼と優勝報告をしようと思い立った平塚でしたが、はた、と困ってしまいました。
「そのときになってようやく気がついたんですけど、俺、ジャンボさんの電話番号知らんかったんですよ」
しばらく考えて「そうやマネージャーさんに取り次いでもらえばいいんや」と、何度か携帯を鳴らしてはみたのですが、いっこうにつながりません。そうこうしている間に初優勝の日から、あっという間に1週間がたってしまい、とうとう『アジア・ジャパン沖縄オープン』の開催週になってしまいました。「しゃあないなあ、ジャンボさんには沖縄で挨拶しよう」と気を取り直して会場入りした平塚だったのですが・・・。
開口一番、「遅いんだよ!!」。練習日の水曜日、ザ・サザンリンクス・ゴルフクラブのロッカールームで案の定、ジャンボに一喝されてしまったのでした。
「あれからもう1週間もたってるじゃないか、罰金モノだぞ!」と頭を小突かれながらも、さりげなく差し出されたその大きな手を、感謝をこめて握り返した平塚。
「ありがとうございます・・・!」。少々手荒い恩人からの祝福に、初優勝の喜びに改めて浸ったのでした。
今日1月7日水曜日の夜は師匠の太田了介氏や地元ファン主催の祝賀パーティに出席したあと、その足で、米ツアーの「ソニー・オープン・イン・ハワイ」出場のため渡米します。昨年に引き続き平塚には、今年も好調なゴルフでジャパンゴルフツアーを大いに沸かせてほしいものです。
※日本ゴルフツアー機構が発刊しているメールマガジン(プレーヤーズラウンジ)より転載しています。