亡き友に捧ぐ 2023年ベストショット3選【中野義昌】
鮮やかな緑が包むゴルフコースに、さまざまなアクセントを添える光と影。2023年はコロナ禍を象徴するマスクが口元から減り、人々の笑顔が映える日常も戻った。それら数々の要素に神経を研ぎ澄ませ、一瞬を切り取ることに全てをかけるフォトグラファーたち。GDOとともに国内外を渡り歩いたプロフェッショナルが選んだ今年の3枚。第3回は中野義昌カメラマン編。
<ショップライトLPGAクラシック by Acer 初日 勝みなみ>
ボールは深いブッシュへと吸い込まれ、左打ちで脱出するしか方法がなかった。優勝を決めた瞬間、選手の笑顔や表情など、良い写真が撮れた感触の高いシーンは数多くある。トラブルショットのシーンはあまり表に出てくることが少ないけど、巡り合わせた時にはカメラマンの胸が躍る場面のひとつ。プレーヤーにとって最悪のシチュエーションは、カメラマンにとって最高のシチュエーションなのである。
<カシオワールドオープン 最終日 中島啓太>
最終日最終ホールのチップインイーグルで賞金王を決めるなんてカッコイイじゃん! と、その瞬間は思った。実は数日前に亡くなった幼なじみの友人に向けたガッツポーズだったという。スポーツには見えない力が働く時がある。いつもクールに、どちらかというと下を向いて力強くガッツポーズするケイタが、この時ばかりは天に向かって派手なガッツポーズを決めた。
<ゴルフ日本シリーズJTカップ 最終日 蝉川泰果>
涙と笑顔が混じり合った優勝だった。アマチュア時代に優勝した「パナソニックオープン」と「日本オープン」、そしてプロ初優勝の「関西オープン」と今回の「JTカップ」。合計4勝、今のところ偶然にも全ての優勝シーンに立ち会うことができている。何度も優勝している選手でも、一度もそのシーンを撮ったことがなかったり、逆に優勝シーンを何度も撮ることができた選手がいたり…。不思議と縁のある選手と、縁のない選手がいると感じることがある。まだまだこれから、何度も蝉川くんの優勝シーンには立ち会うことになりそうだ。