大会名が「チャレンジ“ド”」な理由 福岡・飯塚で異例の男子ツアープロアマ
◇国内男子◇ASO飯塚チャレンジドゴルフトーナメント 事前情報◇麻生飯塚GC (福岡)◇6809yd(パー72)
少し前まで日本男子ツアーの“2軍”に相当する下部ツアーは「チャレンジツアー」(現ABEMAツアー)として親しまれた。欧州ツアー(DPワールドツアー)の下部は今もチャレンジツアーであり、「チャレンジ」のフレーズはそのまま「より上のステージへの挑戦」という意味で、プロゴルフ界で一般化している。ただ、今回は「チャレンジ“ド”」である。今週開催の男子ツアーの新規大会の名称だ。
チャレンジド(challenged)は障がいを持つ人を表現する欧米式のフレーズのひとつ。disabled(できない)やhandicapped(不利な状況にある)といったネガティブな表現に代わる、障がい者を「神から与えられた使命に何事にも挑戦する人」として捉えたものだ。
主催者の株式会社麻生、麻生グループはかねてゴールボールや車いすマラソンといったパラリンピック種目をサポートしてきた歴史がある。中でも本拠の福岡県飯塚市では車いすテニスの世界6大大会のひとつも開催。麻生健大会実行委員長が「タクシーの運転手さんのほとんどが車いすの方たちを車内に(スムーズに)乗せることができるほど」と語る地盤もある。ゴルフの新規大会設立にあたって、障がい者の自立と社会参画を願い、「チャレンジド」と冠した。
開幕前日。多くの試合が大会スポンサー、関係ゲストを招くプロアマ戦には、「リオデジャネイロパラリンピック」走り幅跳びの銀メダリスト・山本篤をはじめとする障がい者ゴルファーが参加した。スノーボードで「北京パラリンピック」に出場した大岩根正隆は左手だけでプレー。今年1月にPGAのティーチングプロとなった吉田隼人は23歳のときにバイク事故で右足に大けがを負った。今では義足のプロとして障がい者ゴルファーの世界ランクで日本人トップの選手でもある。
今季の賞金レースで先頭を走る比嘉一貴は右手だけでクラブを振るアマに目をむいた。「本当にすごい。ヤバい。1Wで230、240ydくらい飛ばしていた。アイアンショットの音も僕よりも良い。片手だったら自分は絶対に勝てません」と感嘆。「僕に対する質問も競技者。向上心も高くポジティブ。本当に楽しそうにプレーされる。ああいう気持ちは僕らも忘れちゃいけない」
また、同じコース内では地元小中学校の特別支援学級から112人の生徒を招いてスナッグゴルフを実施。石川遼、宮里優作、桂川有人、矢野東らトッププロが2時間にわたってプラスチックのクラブを握って交流した。ここ2年、コロナ禍で学校行事が相次いで中止されたこともあり、地域貢献に一役買った。
麻生委員長は「社会人や大人になればなるほど、自分自身が成長した実感などを可視化できるものはなくなっていく。プロゴルファーの方にとっては『応援される側から、応援する側になれる』ことがひとつの成長の可視化になるかなと思う。プロの方、障がい者ゴルファーの方が触れ合うことで、お互いの刺激になればと思い企画させていただいた」と説明。日本の男子ツアーでは異例といえる試みに加え、大会は場内に車いす用の観覧席を用意。来年も“チャレンジド”なギャラリーの取り込みにも挑戦していく考えを示した。(福岡県桂川町/桂川洋一)