「あきらめず」手繰り寄せたマスターズ切符 “4冠”金谷拓実の準備への自負
鬼の形相で締めくくったシーズン最終日から一夜明け、金谷拓実は表情を柔らかくしてオフを迎えた。「日本シリーズJTカップ」の72ホール目、難関18番(パー3)で奪ったバーディの価値は計り知れない。大会を3位で終えて5日付の世界ランキングで49位に浮上、来春のメジャー「マスターズ」出場圏内の年内最終週の50位以内入りに前進。6日に都内で行われた表彰式で「今は穏やかな気持ちです」と喜びをかみしめた。
「最後の一打がすごく大きかった。もちろん賞金王に届かないの(悔しさ)もあったけれど、最後まであきらめずにプレーを続けられて、そういうものもついてきた」。賞金ランキングは2位で終え、2013年の松山英樹以来となるルーキーイヤーでのマネーキングを逃しても、「世界トップ50」も目標のひとつだったことには変わりない。
5月以降、日本を離れて欧米ツアーに参戦。思うような結果を残せず、スイングの乱れなど“後遺症”にも悩まされた。「新人」というエクスキューズを吐くことなど一度としてなく、誰よりもハングリーだったからこそ、苦しみぬいた。「自分の計画とは少し違う方向に進んでいったけれど、それは自分がうまくできなかったから。目標の切り替えも難しかったが、一試合、一試合しっかり準備をして望めた自負はある」と日々の積み重ねに胸を張った。
一年の労をねぎらう日本ゴルフツアー(JGTO)の表彰式。契約先のラルフローレン製のタキシードに蝶ネクタイ、シューズに身を包んで登壇した。「靴下もです(笑)」。最優秀新人賞、パーセーブ率賞、ゴルフ記者賞、そして今季ただ一人、60台(69.73)を記録した平均ストローク賞の“4冠”を手にした。表彰された賞への興味は少々薄く…?、「ドライビングディスタンス(287.11yd/41位)はいつも見てたんですけど」と笑った。
2019年にアマチュアとして出場した「マスターズ」。今度はプロとしてオーガスタの地を踏める日が近づいた。「良いプレーをしたいです」と目を輝かせる。来年、ディフェンディングチャンピオンとして出場する松山とは前日、電話で話したばかり。「試合も(テレビで)観てくれて、的確なアドバイスをいただいた。『そういう風に見えるんだ…』と思いました。見ているところが違う」
年始の出場試合は新型コロナ禍での渡航問題も踏まえて選定していくつもり。「飛距離も精度も求めたい。終盤にショットが乱れたのは体力的な問題もあったと感じている。ちょっと落ち着いてから、練習とトレーニングをしたい」。プロ2シーズン目もゴルフとの向き合い方は同じ。「良い準備をしてきたい」と口元を引き締めた。(編集部・桂川洋一)