2021年 フジサンケイクラシック

一進一退:フジサンケイクラシックの一枚

2021/09/06 17:30
霧の中で懸命にクラブを振る

一年前の自分と今の自分を比較するのに最も良い方法は同じ場所に立つことだ。成長を感じられるか、はたまた退化に打ちひしがれるか。一進一退を繰り返す自分のことを測るものさしになる。

昨年のフジサンケイクラシックはコロナという未知との遭遇によって止まっていた時間が再び動き出したトーナメントだった。開幕戦から中止が相次ぎ、ゴルフトーナメントに関わる全ての人の行き場が奪われた。そんな中、手探りでようやく開催された昨年の大会。みんなが河口湖で再会し、青空に響く国歌に目を閉じたことを思い出した。

あれから一年。マスターズチャンピオンとオリンピックメダリストを輩出する国となった日本。その日本のゴルフシーンは今の世の中と同じようにこの一年いろいろな経験を積んできた。一進一退を繰り返し、少しずつではあるが観客がスポーツを観戦できる状態までなんとかたどり着いた。しかし現状はまだ先が見えない霧の中を進んでいくかのように不安定である。

今週も選手たちは豪雨や深い霧によって幾度となく立ち止まり、待ち、そしてまた歩き出すという状況が続いた。それでも選手たちはかすむフェアウェイを目掛けてクラブを懸命に振った。行く先の見えないところにボールを打つのは不安しかない。しかし彼らは迷わず振った。今の自分の位置を知るために。そして少し前の自分を超えていくために。(フォトグラファー・今井暖)

2021年 フジサンケイクラシック