石川遼が「マスターズ」3位との直接対決で逆転優勝を狙う
国内男子ツアー「ダンロップフェニックストーナメント」に出場している石川遼。昨年はアマチュアとして出場し32位に入ったが、まずは昨年の順位を上回ることが目標だった。予選2日間で通算3アンダーの6位タイ、昨年の成績を完全に上回る展開で、首位と2打差という位置での3日目がスタートした。
立ち上がりドライバーショットはフェアウェイを捕らえるが、アイアンショットでピンに絡めることができずバーディチャンスを迎えられなかった。最初のチャンスは4番パー5。2打目でグリーン手前の狭い花道に運ぶと、アプローチはピン奥2m。このパットを慎重に沈め、通算4アンダーまで伸ばした。
ところが6番パー6で2打目をピン横3mにつけるが、このパットを外しボギー。7番パー5ではティショットがフェアウェイ右サイドのバンカーのすぐ横へ。普通にスタンスがとれない状態で悩んだ石川はボールの左斜め後ろに両足をそろえて構え、クラブフェースを開いて打とうとしたが、ボールは右斜め45度に飛び出し林の中に飛び込んでしまった。
林の中に入った石川が脱出ルートを探していると、ギャラリーから「どこを狙うつもりだろう?」「どこも隙間がないよ」という声が聞こえた。そのとき既に狙いを定めていた石川は心の中で「上にあるんですよ!」とつぶやきながらアドレスに入る。打った瞬間のギャラリーの反応は呆気にとられたの一言。上空の幅40センチ、長さ2mの隙間をピッチングウェッジですり抜けて見せたのだ。
4打目でピン奥3メートルにつけるも、パーパットは惜しくも外れ連続ボギーとなったが、石川は納得のボギーで凌いだ。2打目を打つ前に「アンプレヤブル」を考えなかったか聞くと、「アンプレヤブルを宣言するのは僕の中のプライドが許さないというか、出来る限り打つことしか考えていません」と石川らしい回答が帰ってきた。
さらに9番ではティショットを左のラフに打ち込み、2打目は前方の木が邪魔していたためフェアウェイに脱出。3打目はグリーン手前のラフに捕まり、前半を1バーディ、3ボギーとして通算1アンダーまで後退してしまった。
「9番で3つ目のボギーを叩いたときには、上位進出を諦めかけました。でも、スコアボードを見て、まだ1アンダーだったし、他に1アンダーで回っている選手は諦めていないだろうなと思って気合いを入れなおしました」。
10番ではティショットがフェアウェイの木の下に止まったが、ボールを右足よりに置きピンまで8mに2オン。ここでバーディを奪い、悪い流れを断ち切った。そしてこの日2度目の見せ場、13番がやってくる。連日ドライバーでグリーン方向は狙ったが、風向きが悪く1オンは狙わなかった。ところがこの日は右からの風だったため、思い切って1オンを狙った。すると、グリーン中央にバウンドしたボールはピンを越え、奥のラフまで転がって止まった。
2打目は5番アイアンで転がし、チップインイーグルはならなかったがバーディを奪う。このホールでのドライバーショットから石川のスイングが大きく変わった。その後はフルスイングを行い、確実にフェアウェイを捕らえ続けた。15番で4mを沈めバーディを奪い通算4アンダーまで伸ばすと、16番もカラーから3mのチャンスだったが、ここは決まらず。
17番パー3では、5番アイアンでのティショットが左に曲がり木の根っこに邪魔をされボギーを叩くが、この日3度目の見せ場18番パー5を迎える。ティショットは右サイドのラフへ。「ボールのところだけ芝生が短かったので5番ウッドなら行けると思いました」。残り距離もちょうど良く、5番ウッドで果敢にグリーンを狙った。「打った瞬間は右サイドのバンカーだと思いました」と振り返る石川。ボールがグリーン上に落ち、ピン方向に転がる様子をギャラリーが大歓声で称えると「やったよ!乗ったよ」と嬉しそうにグリーン方向に歩き出した。
ピン奥5m、強烈にスライスして下るラインに、ヘッドをボールに触れさせただけのイーグルパットは惜しくも外れたが、返しのバーディパットをしっかり沈め、通算4アンダー3位タイでホールアウトした。最終日は今年の「マスターズ」で3位タイに入ったブラント・スネデカーと谷原秀人と同じ組で、最終組の1つ前でスタートする。「マスターズ3位のスネデカーとラウンドできるのは嬉しいですし、最後まで誰が優勝するのかわからないような展開にしたいです」。首位との差は開いてしまったが、石川の攻めのゴルフがかみ合えば逆転も不可能な差ではない。この大舞台でまたしても何かを起こしそうな雰囲気が漂っている。