あこがれの石川遼との18ホール「夢なんじゃないかと何回も顔を叩いた」
選手会長に就任した昨年、石川遼はジュニアとプロが一緒にラウンドする「フューチャーGOLFツアー」という新たな大会を発案した。「ゴルフ熱を全国各地から高めたい」と、おもに国内ツアーが行われていない地域を訪れるという狙いに加え、「日本のゴルフ界を担っていくジュニアたちに機会を与えたい」という思いがその根底にある。
2シーズン目を迎えた今年、北海道ブルックスCCで行われた大会で石川遼、佐藤大平の両プロとともに回ったのは、札幌光星高校3年の庄内理湖と同1年の小村隼人。実際にプロと回った2人はなにを感じていたのだろうか?
「きのうの夜に組み合わせ発表があって…」と庄内は興奮気味に振り返った。「練習中だったけど、そのあと動揺しちゃってクラブを落としちゃったりするくらい、“ヤバい”しか出てこなくて。夢なんじゃないかって何回も顔を叩いた」と初めてのプロとのラウンドを心待ちにしていたという。
それでも、プレー当日は落ち着いていた。「緊張してやったらカッコ悪いと思ったから、いつもの自分のプレーをしようと思った」と、「75」で回って女子ジュニアの部で優勝という好成績をマークした。
「石川プロも佐藤プロもすごく良い人たちで、いま思い出しても涙がでるくらい嬉しかった。ずっと小さい頃から観てきた人たちと一緒の地面に立てることでも震えちゃうくらいだけど、進路の話も聞いてくださって、本当に良い人たちだなって。だから好かれるし、ギャラリーもたくさんつくし、自分もこういうプロになりたいと思いました」と、ロールモデルとしての姿を目に焼き付けた。「ゴルフをやっていてこんなに感動したのは初めてでした。辛いことがあっても、このことを思い出したら乗り越えていけると思う」とまで言い切る体験だった。
一方の小村は、石川の言葉を借りると「すごく飛ぶんだけど、かなり緊張していて途中から1Wを打てなくなった。だから、『きょうは結果を気にしないで思い切ってプレーをしたら』と声を掛けたら、最後もドライバーショットは自分より飛んでいたし、力を発揮してくれた」という一日だった。憧れのプロに励まされ、そのプロ本人をオーバードライブした記憶は、小村にとってかけがえのない財産となるだろう。
こんな強烈な体験を、今大会に出場した30人のジュニアたちの誰もが少なからず感じたはずだ。しかも、昨年2回、今年4回とすでに6大会が開催されている。地道な草の根の活動だが、その輪は確実に広がっている。(北海道苫小牧市/今岡涼太)