腹痛で棄権者も 気になるメキシコシティの衛生事情
◇米国男子◇WGCメキシコ選手権 3日目(4日)◇チャプルテペクGC(メキシコ)◇7330yd(パー71)◇
世界ゴルフ選手権が初開催されているメキシコシティ。標高2300mを超える高地に、900万人近い人口を抱えるメキシコの首都であり最大都市は、1325年に築かれたアステカ王国の首都・テノチティトランがその原型となっている。
訪れる前は、治安の悪さを耳にすることが多かったが、選手や関係者が泊まるオフィシャルホテル近辺に多くの警察官が常勤していて、出歩くのに抵抗はない。ただし、これだけ警察官が多いということは、逆に彼らがいなかったらどれだけ危険なのか?という想像も生むのだが・・・。
また、1921年に開場したチャプルテペクGCの入り口は厳重に管理されていて、コース自体も大木とドッグレッグ、高低差を有効に利用された戦略的な素晴らしいコース。そんな中、多くの被害者を生んでいるのが、腹痛や食あたりの症状だ。
大会初日に「ウィルス性胃腸炎/胃インフルエンザ(Stomach Virus)」で棄権したのは、世界ランク5位のヘンリック・ステンソン(スウェーデン)。
ロリー・マキロイ(北アイルランド)は、開幕前日は午前3時に目が覚めて、それ以降は「洗面台を拝んでいた」と、吐き気に苦しんでいたことを上品に打ち明けている。それでも、2日目を終えたときには「かなり良くなった」と、すぐに症状は快方へと向かったという。
大会2日目に途中交替を余儀なくされたのは、フィル・ミケルソンのキャディを務めるジム・“ボーンズ”・マッケイだ。スタート前から不調を抱えていたマッケイは、薬を飲んでスタートしたが、4ホール目にやはり無理だと判断して、ミケルソンの弟・ティムにバッグを託した。ちなみに、ティムは元アリゾナ州大ゴルフ部のコーチで、今週はホン・ラーム(スペイン)のマネージャーとして会場を訪れていた。
この日は、松山英樹と同組で回ったケビン・ナが青白い顔をしながらプレーしていた。頻繁にトイレへと駆け込み、その度にルールオフィシャルのカートに乗って次打地点まで送迎してもらいながら18ホールを完走。なんでも、ホテルのルームサービスで食べたサラダにあたったそうだ。
メキシコシティに15年住む、テレビアステカの西野愛鈴さんによれば、地元のメキシコ人が警戒するのは、水道水と生卵、生野菜、さらに苺はよく“あたる”ということで、特に念入りに洗ってから食べるのだという。
我々日本人メディアの中でも、知るだけでも現場にいる半数近い5人が、腹痛や下痢の症状に苦しんでいる。かくいう筆者も、水曜日の夕方からお腹がゆるくなり出して、高度と空気汚染の影響か、夕方になると頭痛がして熱っぽくなるという症状が続いていた。交通渋滞のため、ホテルからコースまで30分以上は掛かるシャトルバスが不安だったこと・・・。ようやく土曜日になって改善してきたところだ。
それでも、地元の人たちは元気に生活しているのだから、耐性が出来るのだろうか。いずれにせよ、ここメキシコシティでは“お腹の中での戦い”も繰り広げられている。(メキシコ・メキシコシティ/今岡涼太)
■ 今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール
1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka