2015年 ザ・メモリアルトーナメント

ニクラスの松山英樹評 「ジャンボとアオキを…」

2015/06/04 08:50
開幕前日のレッスン会で握手を交わしたニクラスと松山英樹

「ザ・メモリアルトーナメント」開幕前日の3日(水)、ディフェンディングチャンピオンの松山英樹を待っていたのは、大会をホストするジャック・ニクラスだった。プロアマ戦、その後のドライビングレンジでの最終調整を終え、松山は会場内で行われたギャラリー向けのレッスン会に参加。“帝王”の手ほどきでファンと交流した。

ドライビングレンジで開催される毎年恒例のゴルフレッスンイベント。スタンドを埋めたギャラリーを前に、マイクを握って司会を務めるのはニクラス本人だ。過去に丸山茂樹石川遼ら日本人選手たちもこの場に立ったが、松山はまた違う立場で登場した。

4人の参加プロの中で最初に呼ばれた名前。「今シーズンはすでにトップ10入りも7回。前年度王者のヒデキ・マツヤマです」と紹介されると、大歓声がこだました。

それぞれの選手が、異なるクラブでショットを披露するデモンストレーション。松山は4Iを握った。ロングアイアンのポイントを問われると「ロングアイアンはプロでも難しい。アマチュアの方が難しいのは当然です。ボールを無理に上げようとしないこと。クラブのロフトが勝手に上げてくれます」とアドバイス。

鋭く、美しい弾道に感嘆の声が飛んだが、ニクラスは緊張気味の松山に「ヒデキ、もう少し楽しそうにやりなさい。一生懸命やるのは(試合が始まる)あしたからでいい」と突っ込みを入れると、周囲は笑いに包まれた。

日本人史上4人目のツアー優勝を飾ってから1年。状態は、前週末に会場入りしてから下降気味だ。「うまかったですね…去年は。勝ったんで、調子が良かったんでしょうね…。先週(のオフ)はショットが良くてメモリアルは楽しみだなあと思っていたが、大変なことになっている。どこに飛ぶか分からない」。フィル・ミケルソンリッキー・ファウラーといった超人気選手との予選同組にも「自分がいい感じで振れている時は『見せてやろう』と思います。でも…今はどこかに隠れたい」と遠い目をした。

自虐的な松山だが、ニクラスからはこの日、改めて高い評価を受けた。レッスン会の前に行われた公式会見で、過去の日本人選手との比較について質問を受けると「青木功尾崎将司のいいところを組み合わせたような選手」だと語った。

「ジャンボと同じくらいの背格好だが、おそらくジャンボよりも正確性に優れたティショットを打つ。大きく、力強く、それでいて(青木のような)素晴らしいパッティングのタッチがある。信じられないほど素晴らしいタッチと、グリーン周りでのショートゲームに優れている」とニクラス。

2勝目が届きそうで届かない状況もよく知っている。「毎週、惜しい戦いをしているだろう。新聞やテレビを見ていてもいつも名前がある。最近は勝っていないが、決して上位で戦っていないわけではない。これからも上位でプレーし続けるし、日本の象徴的な選手であるはずだ」と太鼓判を押した。

松山の英会話の能力についても「みんなが思っているよりもよく英語を理解しているんじゃないか。ただ話したがらないだけ。それでも構わない。英語ができることで、ゴルフが上達するかは私にも分からない。英樹はまだ若い」と成長の過程を優しく見守っている。「海外から来て、私たちの言葉を学ぶのは大変なこと。いったい何人のアメリカ人が、日本や韓国なんかに行って、その国の言葉を学ぶだろう。そう多くはないはずだ。故郷を離れて、外国に住み、慣れようとする選手たちはそれだけで素晴らしい」

ゴルフ界のレジェンドに、松山が自己紹介する術は言葉ではない。プロゴルファーとしての技術と振る舞いそのものである。(オハイオ州ダブリン/桂川洋一)

■ 桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール

1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw

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