“ベン・ホーガン伝説”が息づくコロニアルCC
先週、テキサス州ダラスで行われていたのは「HPバイロン・ネルソン選手権」。今週、隣町のフォートワースで開催されるのは「クラウンプラザインビテーショナル」。その大会名からは消え失せてしまったが、前者をバイロン・ネルソンの大会とするならば、今週はベン・ホーガンの大会と呼ぶのが相応しい。
1946年に「コロニアル・ナショナルインビテーション」として産声を上げたのが、今大会の生い立ちだ。その記念すべき第1回大会と、翌年に行われた第2回大会、さらに1949年に瀕死の交通事故に遭った後、わずか11ヶ月で奇跡の復活を遂げたホーガンは、1952年と53年にも連勝を飾り、59年にも大会史上最多となる5勝目を挙げている。過去、今大会を連覇したのはホーガンただ一人(しかも2回)。また、59年大会での優勝はPGAツアー通算64勝(歴代4位/メジャー優勝は9回で同4位)を誇るホーガンの同ツアー最後の勝利となった。
コロニアルCCのクラブハウス前にはベン・ホーガンの銅像が建ち(TPCフォーシーズンズにはバイロン・ネルソンの銅像が建つ)、同クラブハウスのプロショップの中には、ホーガンがフォートワースに立ち上げたクラブ製造会社にあった彼のオフィスが、そのままの形で移設されている。入り口にある説明書きにはこう書かれている。「1つの事実として、彼の机の引き出しには、彼が日常使っていた私物がそのまま残されています」。
ホーガンの生い立ちについて少しだけ触れておくと、彼が9歳の時に父・チェスターが(一説によるとホーガンの目の前で)拳銃自殺し、その後彼は家計を支えるためにグレンガーデンCCでキャディのアルバイトを始めたという。その時の衝撃が、「ラウンド中にほとんど言葉を発しなかった」という彼の内向的な性格を作り上げたとも言われている。
日本のファンにとって有名なのは、「モダンゴルフ(原題:Five Lessons: The Modern Fundamentals of Golf)」というゴルフスイングの教則本だろう。また、ホーガンはゴルフ史上最も偉大なスイングの持ち主とも評されており、「今の僕らが見てもめちゃくちゃ綺麗なスイングだと思う(石川遼)」「スイングは見たことあるか分からないけど、すごく綺麗なスイングをしているのがベン・ホーガンだということは知っています(松山英樹)」と、日本の若き2人にも少なくともその名声は伝わっている。
そんな折、2週間ほど前にベン・ホーガンブランドのクラブが15年に再び市場に登場するというニュースが流れた。最初にお目見えするのはアイアンシリーズだというが、死後16年たったホーガンだが、ゴルフ界における存在感はまだまだその衰えを知らないようだ。(テキサス州フォートワース/今岡涼太)
■ 今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール
1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka