世界基準とは一線を画す?“オージー・バンカー”
ビギナーや多くのアマチュアゴルファーがコースに出てまず困ることのひとつが、バンカーショットだ。なにせボールを上げるのが難しいし、まず“砂を打つ”という感覚がどうもピンとこない。何度も何度も“穴掘り”をしている姿は恥ずかしいやら、情けないやらで、いつの間にかすっかりゴルフ嫌いになっていることがある。
しかし上級者やプロゴルファーにとっては大きく事情が異なる。グリーンサイドのバンカーからはライが悪くなければ、基本的にはスピンがかかり、ボールを止められる。確かに“目玉”なんかになったら目も当てられないが、難しいラフからのアプローチを強いられるくらいなら、アゴが低かったり、ライが平らや左足上がりになりやすいバンカーに入れておいた方がラクチンで、それも立派なコースマネジメントだ。
しかし、そうもいかないのがオーストラリアらしい。
選手のスタート前、毎朝コース作りに励む人々は、バンカーを整備した後、砂の上をクワで引っ掻いて畝(溝)を作る。まるでゴルフ場の枯山水だ。「ボールが(スピンで)止まんない。絶対に悪いライになるようにならしてあるんで。レーキの痕の溝に入るようになってる」と言うのは石川遼。その日のラウンド中に改めて“デザイン”することはないが、前の組の選手、キャディがならす前にプレーしなければならない早い組でスタートする選手たちの頭を悩ませる。
さらに言えば、同国でのバンカーのならし方は、少しばかり甘いとか。石川は「オーストラリアン・マスターズなんかを(映像で)見ていると、ならしてはいても、結構適当だったりするし、ボロボロなところが多い」と続ける。米ツアーでは使用したバンカーをキャディがならすのを忘れていたら、選手の責任となり罰則もある。そして日本でも同様の動きが画策されている。
バンカー脱出の技術には大きな違いがあっても、キレイにならすのはプロ・アマを問わず、ゴルファーとしての最低限のマナーのはず。“あるがまま”の精神とは、ちょっと違うような…。(オーストラリア・メルボルン/桂川洋一)
■ 桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール
1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw